桑田さんの主張「科学に基づく投球数制限」を甲子園に!

感情的に、真夏の甲子園の是非を論じていても仕方がない。直ちにやらなければならないことは、真夏の甲子園大会によって、選手にどれだけのダメージが与えられるかを科学的に明らかにすることだ。

桑田真澄さんは、投球数制限を直ちに導入すべきだと提案する。アメリカでは、投球数が身体に与える影響を科学的に分析し、それを基にピッチスマートというガイドラインがあって、幼少の頃から投球数がかなり制限されているらしい。これこそがプレーヤーズ・ファーストじゃないか。

スポーツを精神論で語る時代はもう終わりにしなければならない。精神論で語ってきたような権化が、山根会長や日本大学の田中英寿理事長のような人たちだろう。

真夏の甲子園大会がいかに子供たちに悪影響を及ぼしているか。

投球数、連投、炎天下の過密スケジュール。さらに真夏の甲子園大会があるがゆえに、通年でどのような練習や試合が組まれることになるか。真夏の甲子園大会に備えて、炎天下での練習が行われているであろうが、それらがどれだけ選手たちに悪影響を与えているか。

練習によって選手のスキルを伸ばすには、適切な休息が必要だというのは、スポーツ科学の領域では常識になっている。しかし、学校クラブ活動の現場では、そこをしっかりと理解しているスポーツ指導者はまだまだ少ないようだ。

真夏の甲子園大会を開催するために、選手たちは休息をきちんと取れていないのではないか? 春の選抜大会もあるので、なおさら休息なんて取れていないことは容易に推察される。

選手のスキルを伸ばし、スポーツを心から楽しめるようにするためには、どのような指導・練習が必要で、どのような大会形式がふさわしいのか。高野連と朝日新聞、毎日新聞は直ちに科学的に分析・検証・議論をすべきである。

(略)

選手が真夏の甲子園を望んでいるから真夏の甲子園でやることがプレーヤーズ・ファーストだ、なんてことを欧米のスポーツ指導者の世界で言えば、笑い者になる。しかし今の日本のスポーツ界にはそのような感覚についての理解が少ない。スポーツを科学的に捉えるプロの指導者を育成し、そのような者たちが各スポーツ競技団体を引っ張っていくような、日本のスポーツ界にしなければならない。

スポーツに対する日本国民の意識改革を大胆に行いながら、日本スポーツ界の抜本的改革を試みるならば、やはり真夏の甲子園大会から大胆にメスを入れるべきだ。この方針を打ち立て実行する力こそが、問題解決能力である。

(略)

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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.114(8月7日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【災害多発時代の危機管理〈2〉】実践・組織を動かす「行動基準」はこう作る!》特集です!

(写真=iStock.com)
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