間もなく始まる第100回「夏の甲子園」。野球のみならずスポーツ全般を盛り上げる国民的行事だが、その裏には大きな不条理が存在する。橋下徹氏は、こうした“甲子園問題”の改革こそ日本のスポーツ界を改革するための「センターピン」だと喝破する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(7月31日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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スポーツ問題の根源は甲子園にあり!

写真=iStock.com/PeteMuller

甲子園はこれまで徹底的に球児の青春物語を中心とする「きれいごと」ばかりを強調してきた。その結果、高校野球や学校スポーツの世界で蓋をされてきた「負の問題」が何も解決されずに放置され、今それが爆発し始めているのではないか。最近大きな話題になった、日本大学のアメフトタックル事件や、女子レスリング日本代表のパワハラ事件の問題の根っこも、結局高校野球の甲子園大会にあるように思えてならない。

僕が高校スポーツ、学校スポーツの問題を考えるようになったのは、市長時代に起きた大阪市立桜宮高校バスケットボール部の部員自殺事件がきっかけだった。それは顧問の暴力的指導に耐えかね部員が自殺をした事件だった。ずいぶん批判も受けたが、僕は桜宮高校の入試をストップして、学校を立て直すことを最優先した。その立て直しの過程で、元巨人軍のエース、桑田真澄さんに講演会を開いてもらい、大阪の学校のスポーツクラブの指導者を集めて話をしてもらった。

その場で桑田さんが話したことで、今も忘れられないことがある。桑田さんは、「日本の学校スポーツのもともとの源流が、野球である」と語るとともに、その野球指導の根幹には、旧日本軍の「兵士養成プログラム」があると言われたんだ。

僕もそのタイミングで、日本の学校スポーツの歴史について徹底的に勉強した。高校野球の歴史を調べると、戦時中の軍事教練が、その練習方針や精神面に大きな影響を与えていることは事実だった。朝日新聞がもっとも嫌う、旧日本軍の軍事教練が、高校野球の部活動の根本にあることがわかり、そこから僕は学校スポーツの問題、もっといえば日本スポーツの問題の根源が、甲子園にあると考えるようになった。

桜宮高校の改革も、この「兵士養成プログラム」からの脱却を目指した。既存のシステムや考え方を「改善」するのではなく、まるっきり新しく「改革」するとき、必ず大きな賛否両論が起こる。それは改善というのは、みんなの合意をとりながら、少しずつ物事を修正していく作業だけど、「改革」とは、体制そのものやそこに関わっている人々の意識を根本から変える作業だからだ。

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