健康な状態では、体内は完全に無菌状態だ。本来、「私」の体内には、「私」以外の細胞は、存在してはならない。

それなのに、体内に菌がいるということは、「敵」の侵入を意味する。血管内に菌がいるということは、菌血症と呼ばれる異常な状態だ。全身をパトロールする戦士である免疫細胞は、戦闘モードになり、全身で炎症が引き起こされる。

動脈硬化にまつわる疾患のリスクを上げる

また、菌が侵入する手前の段階でも、歯周病菌が増えている局所に免疫細胞が動員されると、サイトカインという炎症性物質を破壊兵器として分泌する。大量のサイトカインが血流に乗ると、全身に戦火が飛び火することになる。

桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言われるのか』(光文社新書)

サイトカインは血管の壁を傷つけ、全身の動脈硬化の原因になる。高血圧、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化にまつわる疾患のリスクを上げるのだ。

大動脈瘤(りゅう)や末梢(まっしょう)血管疾患などの患者の血管壁からは、歯周病菌が高率で検出される。

また、歯周病と糖尿病は、双方向のリスクになることがわかっている。糖尿病があると、免疫力が低下して、歯周病になりやすい。歯周病があると、全身の炎症を引き起こし、それが血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを低下させ、血糖値を上がりやすくさせる。

糖尿病があるのであれば、口腔ケアは必須であり、それによって血糖コントロールの改善が期待できる。

歯周病による口臭は、体内の不健康の現れと考えて、今日からすぐに口腔ケアを始めよう。脱口臭は、脱不健康である。

桐村里紗(きりむら・りさ)
内科医・認定産業医。1980年岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。治療よりも予防を重視し、最新の分子整合栄養医学や生命科学、常在細菌学、意識科学、物理学などをもとに、執筆、webメディア、講演活動などで、新しい時代のライフスタイルとヘルスケア情報を発信。監修した企業での健康プロジェクトは、第1回健康科学ビジネスベストセレクションズ受賞(健康科学ビジネス推進機構)。著書に、『「美女のステージ」に経ち続けたければ、その思い込みを捨てなさい』(光文社)など。