「チャット小説のアプリ」は儲かるのか?

【田原】久保田さんの会社は、チャット小説のアプリをつくられています。チャット小説って何ですか?

【久保田】LINEのように、会話をやりとりするかのようなUI(ユーザーインターフェース)で読む小説のことです。僕たちが提供しているのは、「Balloon」というサービス。バルーンには英語で吹き出しという意味があって、グローバルで使われるサービスにしたいと名付けました。

【田原】エンタメでも小説に目をつけたのは意外です。

【久保田】子どものころにやっていた少林寺に「力愛不二(リキアイフニ)」という言葉があります。愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力。だから両方が必要だという意味ですが、僕はビジネスも同じで、やるからには楽しいだけではなく市場で勝たなきゃいけないと思っています。では、エンタメで勝つ確率を高めるにはどうすればいいのか。必要なのは、ヒットしたコンテンツを分析することだと考えました。チャット小説はセリフを単語単位でユーザーがどう反応したのか情報が取れるので、分析結果を組み合わせることで、ヒットを再現しやすいと考えました。

【田原】作家はどうするんですか。誰に書いてもらうの?

【久保田】約10年前に、ケータイ小説ブームがありました。そこで、当時から活躍しているプロの作家にオファーを出しました。ほかにも劇作家やゲームのシナリオライター、自作の小説をフリマで販売している人などに声をかけて執筆してもらいました。現在は会社として50人ほどの作家さんと契約しています。

【田原】創業資金はどうしたんですか。

【久保田】会社を登記してすぐ約2000万円の資金調達をしました。ベンチャーキャピタル時代の上司や近くで仕事をしていたベンチャーキャピタルから出資していただきました。「久保田なら投げ出さずにきちんとやるだろう」と評価していただき、出資を受けることができました。

【田原】クオリティーとおっしゃったけど、作家には編集者がつく?

【久保田】はい。ただ、一般の小説の編集者とは役割が違うかもしれません。先ほど言ったように、チャット小説は分析ができます。どんなワードで検索されているかを調べて、「幼馴染み」「ユーチューバー」「三角関係」がヒットしているなら、「幼馴染みがユーチューバーになって、三角関係で悩んでいるというストーリーでどうですか」と作家に投げかけたりしています。

【田原】作品の量は足りますか?

【久保田】じつは「Balloon」にはユーザーが作品を投稿できる機能もあります。量としてはこちらのほうが圧倒的に多く、99%を占めます。プロ作家の本数も増やしていきますが、現状は月に何本か新作を出せば十分に回ります。

【田原】へえ、どんな人が小説を載せるんだろう。

【久保田】圧倒的に若いんです。Balloonのユーザーは9割が女性で、18歳以下が約7割。なかには小学3~4年生くらいの作家もいます。ジャンルで言うと、恋愛小説がもっとも多いですね。