※本稿は、三戸政和『サラリーマンは300万円で会社を買いなさい』(講談社)の一部を再編集したものです。
前近代的でも黒字の中小企業
投資ファンドを運営する私たちは、3期分の財務諸表を見れば、その会社がどのような経営状態にあるかをほぼ把握することができます。自身の会社でそれができなければ、経営者とはいえないと思うのですが、実際には、中小企業では財務諸表が読めない経営者がほとんどです。
さて、あなたは財務諸表が読めるでしょうか。「自信がない」という人は、社長になるには会計を少し勉強する必要があるとは思います。ただ、大企業で管理職をしていた人ならば、おそらく予算編成や決算で、自分たちの業界における決算数値の意味はわかっていると思います。それだけで旧態依然の中小企業の経営者より、経営スキルの面では進んでいる可能性が高いといえます。
大企業には、“仕組みの導入”に特化した担当者がいますが、中小企業にはいません。経営企画室など業務改善を促す部署自体がありませんし、そんな人を雇う余裕もありません。
そのため仕組みの導入は、社長がやるしかありません。しかし致命的なことに、社長自身がそもそもどんな新しい仕組みがあるのかを知らないのです。これまで中小企業は、親族内承継が9割以上でした。ですから社長も、大学を出ていったんどこか大きな企業に新卒で入り、ほんの数年の経験しかないままに家業を継ぐために戻ってきて入社し、10年勤めて社長になったというようなケースが、本当に多いのです。
それぞれの地域に、中小企業の若手経営者が集まる団体がいくつかあります。多くは地元貢献と、家業を継ぐ息子たちの経営者としての育成を目的に運営されています。といっても、団体によっては、ワードやエクセル、パワーポイントの“使い方”を勉強したり、アジェンダの作り方や議事運営の仕方、人前でのしゃべり方を勉強したりしています。一般企業の新入社員研修さながらの内容です。しかし、これが中小企業の社長に求められる平均的なレベルだったりするのです。
それでも回る中小企業
そこで私が言いたいのは、「それでも中小企業は回っている」ということです。大企業で鍛えられた人にとっては、びっくりするほど前近代的で、まともな管理もされていない。にもかかわらず仕事が回り、経営は黒字で安定している中小企業がたくさんあるのです。
経営システムが改善されたら? ビジネスモデルが洗練されたら? もっともっと儲かる企業がたくさんあります。改善余地も成長余地もたっぷりあるのです。
私の投資ファンドは、このように事業内容は良いものの、経営手法や管理が脆弱な中小企業に向けて、株主としてハンズオン支援(投資先に取締役を派遣して経営を担う支援)を行い企業価値を上げることで、投資リターンを得ることを業としています。大企業の仕組みや東京の最先端で闘っているベンチャーの経営戦略や手法を地方の中小企業に取り込むだけで、その地域では、相当優秀な中小企業へと生まれ変わるのです。
つまるところ、このような潜在力のある中小企業を買い、あなたが経営しませんか? というのが、私からの提案です。