読売は「もりかけ疑惑」の幕引きを主張したいのか

こうした党首討論について、各紙の社説はどう書いているのか。

安倍政権を擁護する姿勢が強い読売新聞の社説(5月31日付)は、野党の追及するもりかけ疑惑に「いずれも何度も国会で取り上げられた論点である」と言い切り、「首相は『同じことを聞かれれば同じことを答える』と応じ、自らと夫人の関わりを否定した」と書く。

そのうえで「党首討論がこれまでの委員会審議の繰り返しでは意味がない。両氏(枝野氏と安倍首相)のやり取りは物足りなかったと言わざるを得ない」と指摘する。

もりかけ問題を取り上げる野党を「幕引きにすべき問題だ」と批判したいのだろう。

毎日新聞の社説(5月31日付)は読売社説とは違う。

「本質そらしは首相の方だ」との強い見出しを付けてこう主張していく。

「相変わらず首相は聞かれたことにまともに答えず、時間を空費する場面が目立った」
「森友・加計問題に対する国民の疑念が晴れないのはなぜか。首相はなお、分からないのかもしれない」
「首相の姿勢を端的に表していたのが、枝野氏に対して語った『同じことを聞かれれば、同じことを答える(しかない)』との答弁だ」
「財務省の文書改ざんなど一連の重大問題は、すべて首相を守るためではなかったか。共産党の志位和夫委員長が指摘したように、多くの国民がそれが本質と見ているはずだ」
「にもかかわらず首相は文書改ざんは『最終的には私の責任』と言う一方で、文書保存のシステムに問題があったと強調した。問題をすり替えているのはやはり首相である」

社説を読み比べると、新聞社の主義・主張の違いがよくわかる。今回の読売社説と毎日社説は、そのいい例だろう。

党首討論終了後に「笑顔で握手」した野党の党首

再び読売社説に戻る。

読売社説はその中盤で「国民民主党の玉木(雄一郎)共同代表は、米政権が検討する輸入車への新たな関税措置を問題視し、『言うべきことは言い、やるべきことをやらないと、自由で開かれた貿易体制が壊れる』と指摘した」と書き、「首相は『同盟国の日本に課すのは理解し難い』と語った。国益を確保する観点から『戦略を持って対応している』とも強調した」と指摘する。

自国第1主義を唱えるトランプ米大統領の対米通商問題だ。これに安倍首相がどう対応していくのか。外交問題に強いといわれる安倍首相の腕の見せどころだが、日本の重要課題であることに間違いない。

さらに読売社説は日露の北方領土交渉を取り上げた玉木氏の質問も取り上げる。

「日露の北方領土交渉に関して玉木氏は、4島返還時には米軍を島に駐留させないと、トランプ米大統領から確約をとるよう求めた。首相は、交渉の詳細は明らかにできないと答えた」
「停滞気味の領土問題を打開する展望や決意を首相が示さなかったのは残念である」

こう書いた後で読売社説は「発足から間もない党の代表として、玉木氏が意欲的に論戦を挑んだのは評価できる」と玉木氏を褒める。

なるほど読売社説が主張する通りかもしれない。日本の政策課題を論議するのが党首討論の目的だからだ。

しかしながら玉木氏と安倍首相の間で最初からある程度話が出来上がっていたのかもしれない。玉木氏がもりかけ疑惑に触れなかったり、党首討論終了後に2人が笑顔で握手していたりする場面を見ると、そう考えてしまう。