町側は「今でも間違っているとは思わない」

プレジデント編集部は今年4月、本山町役場をたずね、男性の元上司に直接当時の事情を聞いた。

――彼(元職員の男性)は他の職員とコミュニケーションが取れていなかったということだが、それは上司が手ほどきするものではないか。

「こちらはコミュニケーションを取る努力をしたが、本人は物忘れも激しく、業務に支障が出ていた」

本山町役場の外観

――業務日報に「合議を取れ」と複数回書かれているが、どのような内容が「合議」を取る必要があるのか。また、それを本人に指導していたか。

「職場での声掛けなどは指導したが、“ホウレンソウ”が彼はできていなかった。合議について明確な定義はない」

――補助金の受け取りについて。住民に渡す期限が決まっていないと聞いている。それに町が指摘している振り込み遅れは3件(計10288円)だった。住民から振り込みの催促をされたことをもって「町の信用を失墜させた」と結論付けるのは過剰ではないか。仮にそれほど重要なものだとすれば、試用期間中、彼に対して上司がチェックする機能が必要ではないか。

「振り込んでほしいと思っている住民を待たせてしまったのは事実。町の信用を失墜させているという認識に変わりはない。たしかにチェック機能はあるべきだと思う」

――期限が決まっていないのだから、待たされたと感じる時間は住民によって違うのではないか。

「それはわからない。しかしある住民は2度も窓口に『振り込みはまだか』と相談にきている」

――それについて男性は「その住民は1回目の来庁は補助金申請方法の相談のみで、2回目になって初めて『振り込みはまだか』と言われた」と主張している。ちなみに本山町は同様のインシデントはこれまでになかったのか。

「あまりない」

「プレッシャーを与えたという認識はない」

――本人の親戚に業務内容や下着などプライベートなことに関して苦言を呈するのは自治体の指導体制として不適切ではないか。

「それはわからない。親戚とは面識があり、何かあったら言ってくださいと言われていた」

――下着のことを両親に話すのはセクハラとも捉えられるのでは。

「セクハラという認識はない」

本山町役場の周辺。のどかな風景が広がっていた。

――自治労連の役員は上司がかけあって辞めさせるべきでは。

「(職場の慣例であっても)職務と関係ない。大変そうには見えなかったし、本人も言ってこなかった」

――定期的にヒアリングを行っていたようだが、本人の悩みを聞けていなかったのでは。

「本人は、自分がミスをする原因などをこのヒアリングを通じてだいぶ分かってきたと思う」

――業務日報について、『伝えそこねていた』という書き方について、『忘れていた、と正確に記入して』との指摘があった。意味が伝わっていれば、基本的には問題ないのでは。こうした指摘は、書く側に心理的なプレッシャーを与えるのでは。

「その2つの言葉は本当に意味的に一緒なのか。またプレッシャーを与えたという認識はない」

――「(文章が)意味不明」というコメントは指導になっていないように思う。こうしたコメントはパワハラの恐れがあると感じるが、そういった認識はあるか。

「『分かるように書いてください』と口頭で言っている。パワハラをしたという認識はない」

――本人が解雇は不服と言っているが処分に対して今でも合理的だと思うか。

「試用期間の延長、そして正職員の採用をしなかったことは今でも間違っているとは思っていない」