手書きの「業務日報」を毎日提出させられた

それからは「ヒアリング」として、上司3人と彼1人の面談が毎週設けられた。また「業務日報」という報告書を毎日手書きで提出することが義務付けられた。

「同期のうち自分だけ試用期間が延長されているという事情の中、上司3人に囲まれて受ける『ヒアリング』はとにかくプレッシャーでした。仕事で犯したミスを詳細に詰められ、うまく答えられないと『仕事に責任を持っていない』といわれます。悩み事を相談するとかそういう場所ではなかったです」

「日報はその日の業務や相談事項を書いて毎日午後5時15分ごろに提出していました。『わかりくい』と上司から何度も書き直しを命じられた日もありました。誤字脱字や略語は許されませんし、何より他の仕事をしながら業務時間内に書き終えるのは大変でした」

日報には翌日、課長からコメントが入る。学校で言えば、日直が記入する学級日誌のようなものだが、そこに書かれている文言は、かなり厳しい内容だ。

「物忘れが多い」
「(文章が)意味不明」
「自分の判断だけで動かず、合議を取って」
「『伝えそこねていた』ではなく『忘れていた』と報告を受けた。正確に記入して」
業務日報(11月6日)。プライバシー保護のため一部を加工している。

男性が正採用されなかった理由は「職務を良好な成績で遂行したとは判断できない。為、総合評価は『不良』と判断する」だった。具体的にどのような点に問題があったのか。

「私は補助金の手続き方法について勘違いしており、申請に対して私が補助金を振り込まなければいけないところ、振り込みはほかの人がするものだと思い込んでいました。そのため住民から上司に対して『振り込みはいつされるのか』との催促があったようです。解雇された日に渡された勤務態度を報告する文書には、この振り込みミスについて“町の信用を失墜させた”と書かれていました。たしかに私のミスなのですが、補助金は振込期限が決まっているわけではなかったのです」

親戚の家に「辞めるようにいってくれ」と頼みに来た

ほかにも不可解な点がいくつかある。彼の親戚の家に上司が赴き、「辞めるようにいってくれ」と頼みに来たというのだ。

「私の叔父に対して『おたくの甥っ子さん、辞めるように言ってくれないかな』『彼は勤務中ニオうんです』『普段パンツをはいていないことを知っていますか? 常識がない』などと話していたそうです」

それが両親の耳にも入り、後日上司のもとに両親が話を聞きに行ったという。

「上司の家にうかがった際、『私のスラックスをあげるので着替えなさい』と言われたのですが、その時は着替えるのが面倒くさくて『洗濯が間に合わなくてパンツをはいていません』とウソをつきました。ウソはよくなかったと思いますが、下着のこととか、そんなプライベートな話を家族には言ってもらいたくなかったです」

それ以外に、他の自治体との飲み会での話についても。「面白い芸をするように先輩に指示され、その場で上着の袖を破り、お笑い芸人のスギちゃんのモノマネをしました。そのときは盛り上がったのですが、上司は親戚に“町の尊厳を貶めた”と伝えたようです」。