京都大学のキャンパス周辺に設置されていた立て看板が、大学当局により強制撤去された。撤去の発端は、大学が京都市から景観条例にもとづく行政指導を受けたことだった。だが景観条例を理由に、立て看板を撤去することは妥当なのか。早稲田大学の卯月盛夫教授は「今回の取り組みは評価できない」と警鐘を鳴らす。その理由とは――。
写真=時事通信フォト

早大教授「今回の取り組みは評価できません」

「京大名物」と言われてきた吉田キャンパス周辺の立て看板が、昨年末から規制され、今年5月に入って京都大学当局によって強制撤去された。現役学生やOBの一部は「京都大学の文化がなくなる」といった嘆きの声をあげている。

撤去の発端は、昨年10月、京都大学が京都市から屋外広告の規制条例に違反するとして文書で行政指導を受けたことだった。行政指導を受け、京都大学は12月に看板の設置場所を指定場所に限るという規定を策定。規定に合わない看板については、今年5月、強制撤去した。

大学側は「京都市屋外広告物に関する条例」を根拠としている。だが、都市デザインを専門とする早稲田大学の卯月盛夫教授は「今回の取り組みは評価できません」と大学と市の判断を真っ向から否定する。

「理由は2つあります。1つは、条例が基本的に民間の商業広告を規制するものであるからです。具体的には、繁華街にある飲食店などの看板が想定されており、京都大学を含む教育機関や公共施設については触れられていないのです。条例のガイドラインには、最後の行に「商業広告以外の営利を目的としないものも含みます」と書かれていますが、そうした曖昧な規定を根拠にするのは乱暴です」

「本来であれば公共性の強い京都大学のような場合は、大規模な教育機関の土地利用として京都市は別途詳細なガイドラインを設けるべきです。大学の立て看板を民間の看板と同じ内容で規制をかけようとしていることに違和感を感じます」

さらに2つ目にあげるのが、ガイドラインには「屋外広告物とは常時または一定期間掲示されるもの」と記述があるが、その期間が曖昧であるという点だ。

「自治体によりますが、例えば横浜市のみなとみらい地区では一定期間を10日間と定め、イベントの数日間は派手な看板を出せるようになっています。このような具体的な期間を定めているならまだしも、京都市はそれを明確にしていません」

つまり、条例の規制対象は商業広告を想定している点と、掲示期間の定義が不明確という点が、規制するのに無理があるというわけだ。この2点をクリアできなければ、条例を根拠とするのは乱暴であるという印象がぬぐえない。