日大や安倍政権と対照的! TOKIOと山中さんが危機管理に成功した理由

まとめると危機管理指揮官としての危機管理マネジメントのポイントは次の通り。

(1)事案の概要を見て、責任を認めるべきかどうかを判断。道義的責任があるのであれば、後の法的賠償責任のことは考えず、全面的に責任を認めて、真摯に徹底して謝罪する。加害当事者(加害学生)の社会的制裁を緩和するためにも、加害当事者の反省・謝罪の意を直ちに公表する。

(2)報道の状況などを見て、組織の最高レベルのトップ(学長)が出るべきかどうかを判断する。第一次的な責任者(監督)は必ず前面に出る。

(3)責任を認めて謝罪をした上で、細かな事実関係については、第三者調査チームで徹底調査することを宣言する。いつまでに公に報告をするか納期を設定する。原則は1カ月後。1カ月以上の調査が必要な場合には、まずは1カ月後に中間報告することを約束する。

(4)メディアの報道に踊らされて、事実確認をしなければならないポイントを見誤らないこと。言い訳のための安易な事実否定は厳禁。事実調査は責任を認める姿勢でやるのが原則。仮に言い訳し得る事情・責任を減じる主張がありそうでも、それは慎重に主張する。

(5)責任を認めるにあたって、同種他事例や同業他社(者)の状況も調べる。自分たちが特殊なのかどうかを確認し、特殊でなければ、反省・謝罪を徹底した上で全体の改善のためにその旨も主張する。

このように言われてみれば簡単で当たり前なことだけど、事前にしっかりと勉強しておかないと、いざその場では思いつかない。現に危機管理学部を擁する日本大学はこれらのことが全くできていないからね。日本大学も、僕を危機管理学部長にした方がいいんじゃないの? ただ報酬もしっかり頂くよ。安い値段では良い人材は来ないよ!

ちなみに最近の事例で、危機管理のお手本はTOKIO、ちょっと前では京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授(所長)だろう。

TOKIOはメンバーである山口達也さんの未成年者に対する強制わいせつ事件で、山中さんはiPS細胞研究所のメンバーである山水(やまみず)康平・特定拠点助教による論文不正事件で、危機管理対応することになった。TOKIOも山中さんも、危機管理としてあのような対応をしていたわけじゃないと言われるかもしれないけど、本人たちの意図はどうであれ、客観的にはパーフェクトな危機管理対応だった。実際、もうTOKIOにも山中さんにも批判の声は続いていない。逆にTOKIOや山中さんに同情の声が上がったほどだ。

TOKIOは、メンバーの一人である国分太一さんが朝の情報番組の司会をやっていることもあり、番組でもたっぷりと時間を割いていた。TOKIOのメンバーは徹底した謝罪を繰り返した。山中さんも同じく徹底した謝罪と事実解明を実施した。TOKIOは芸能事務所社長のジャニー喜多川さんが文書で謝罪の意を伝えたものの、トップによる公の記者会見は開いていない。トップがやらなければならない役割をTOKIOメンバーが一手に引き受けた。

ちょうど今、加害学生が記者会見を終えた。立派な記者会見だった。監督からラフ・プレーの指示があったとしても、それを断らなかった自分に責任がある、と。しっかり謝罪と反省の意も伝わった。初動の危機管理対応としてはパーフェクトだ。是非、被害学生と和解して、再びアメフトの世界に戻ってきて欲しい。

初動対応をしっかりとやれば、無用な批判を沸き上がらせることはないし、批判は沈静化する。真逆の拙い初動対応が、安倍政権や日本大学(アメフト部)。初動危機管理対応の巧拙が面白いぐらい比較できる事例だね。

(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約1万8500字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.104(5月22日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【危機管理の授業】TOKIO、山中教授とは正反対! 日大アメフト問題はなぜ深刻化したか?》特集です!

(写真=iStock.com)
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