さらには、この企業はすでにAI用半導体と捉えるべきではない領域にまで事業展開しています。同社ではすでに多くのソフトウェアエンジニアを内部に抱え、車載プラットフォームを基軸として自動運転関連サービスのソフトウェア開発にも乗り出しています。

同社にとってGPUはもはや手段であり、自動運転プラットフォームにおけるサービスやソフトでの覇権も握ろうともくろんでいるのです。自動運転技術の要である3D画像処理をおさえたエヌビディアの動向は目が離せません。

インテル&モービルアイの猛追

インテルは、ここへきてエヌビディア追走になりふり構わない姿勢を鮮明にしています。

エヌビディアと同じく米国カリフォルニア州サンタクララに本社を置き、従業員規模は10万人を超えています。アニュアルレポートによれば、2017年の売上高は628億ドル、営業利益は179億ドルです。エヌビディアと比べると、従業員規模は10倍、売上高・営業利益は9倍、時価総額で約1.8倍。パソコンに搭載されるCPUでは圧倒的な市場シェアを持ち、データセンターのサーバー向けCPUでも実に9割を超えるシェアを持つとされています。

しかし、次世代自動車産業を見据えた事業展開では、完全にエヌビディアの後塵を拝しています。この評価にしても、時価総額が売上や企業規模から考えて相対的にライバルより低い結果になって表れています。CPU市場の将来性が少しずつ不透明になるなか、そして自動運転社会の機運が高まるなか、インテルはその戦略の転換を図ろうとしています。

2017年1月、インテルは自動運転技術の開発基盤「Intel GO」を発表しました。これは、自動車、コネクティビティ、クラウドを連携させる自動車向けソリューション。「インテルAtomプロセッサ」と「インテルXeonプロセッサ」の二つの選択肢が用意され、開発者が必要とするパフォーマンスに合わせて拡張可能な開発キットと、自動運転車に特化した業界初の5G対応開発プラットフォームを提供するとしています。

買収先にインテルの自動運転事業部門を統合

2017年3月には、GPUよりも高速の演算処理が可能なFPGAに強みを持つ、イスラエルのモービルアイを買収しました。これは、2015年のFPGA最大手の米国アルテラの買収、2016年のディープラーニング分野の半導体を手がけていた米国ベンチャーのナバーナの買収に続くものでした。

「インテル入ってる」のCMやパソコンのCPUでおなじみだったインテルは、近年株価も伸び悩み、売上の伸びも鈍化してきました。同社では、パソコン全盛期においてはマイクロソフトのウィンドウズとの“ウィンテル連合”により市場を支配した一方で、次のプラットフォームとなったスマートフォンでは米国クアルコムやソフトバンクが買収した英国アームなどに惨敗した経験も有しています。このようななかでインテルは、データセンター、フラッシュメモリー、IoTなどを重要な事業領域と定義し、特にIoTでは自動運転事業に照準を定めているのです。

モービルアイの買収で注目されたのは、買収の発表と同時に、インテルがモービルアイの共同創業者兼会長であり同社CTOでもあるアムノン・シャシュア氏をインテル全体の自動運転事業の責任者に任命し、インテルの同事業本部の拠点をイスラエルに移すと発表したことでした。つまりは、買収するインテルの組織に買収されるモービルアイを統合するのではなく、イスラエルに本拠を置くモービルアイにインテルの自動運転事業部門を統合するという組織形態にすると発表したのです。