株式上場には興味がない

──ジャパネットが目指す「あるべき姿」は何でしょうか?

【高田】漠然としたイメージですが、お客様・社員・会社・取引先様みんながハッピーで幸せを感じられる会社になれば、と思っています。今の売上は1700億円で、理論上は5000億円になったらより多くの人を幸せにできます。でも5000億円が目的化して幸せにならないのであれば、むしろ今のままでいい。たとえば「シニアのご夫婦で相手が亡くなり、友達がいない」という記事を読んだ時、こういう方たちにクルージングに来てもらって、「今年はこのクルージングに行こうよ」という友達ができたらいいな、と思いますし、実際に現地でお客様からそんなお話を聞くと本当に嬉しいですね。V・ファーレン長崎にも感動したんですよ。これは試合後のサッカー場の動画です。選手とファンがまさに一体です。

──皆で歌っていますね。汗ばんだ感じも伝わってきます。

【高田】長崎に行くと、僕も「ありがとう」と声をかけられますね。

──こういうところを目指していると、株式上場などは、まったく別の話ですね。

【高田】上場は興味ありませんね。サッカーチームの株も100%持つことにこだわりました。50%だと残り50%は他の株主のことを考えなければならない。だから「100%でなければやらない」と貫きました。

──今日はありがとうございました。

トップが現場をチェックするのはムリ?

高田旭人社長とは初対面。しかし不思議なほど意気投合した。それは高田社長がジャパネットの経営で目指す方向と、トルネード式仮説検証の方向が同じだからだろう。

高田社長は完璧を求めず、スピード重視で仮説を作っている。仕事に向かう姿勢は「もったいない」「サッサと決めよう」。しかし必ずシンプルな事実とロジックの裏付けがあり、合理性を重視し、「想い」を何よりも大切にしている。「同じ意見でも、根拠ある仮説があって検証するAさんにはイエス、思いつきのBさんにはノーって言うことはある」という話も参考になった。

また高田社長は、現場を理解するのにとても多くの時間と労力を使っている。

最近、企業の不祥事会見で、「現場を把握できなかった」「現場が悪い」と言うトップが多い。現場とトップの乖離(かいり)は、日本の組織が「衰退パターン」に陥る兆候だ。

一方で「大組織のトップが現場をチェックするのはムリだ」という意見もある。本当にそうだろうか?

内部からの情報リークで明るみに出る不祥事は多い。現場の人たちは必ずアラートを出しているということだ。現場のアラートが社外に流れる前に、トップが敏感に察知する仕組みなら、作れるはずだ。

「『何かあったら言ってよ』と言うのは無責任な上司」と考え、現場が言いやすい空気を作り、社員とのコミュニケーションの仕組みづくりに魂を込め続ける高田社長の姿は、多くの企業にとって参考になるはずだ。