地方に移住したいロスジェネの横顔は

それでは、地方に移住したいと考える三大都市圏のロスジェネは、どのような価値観を持った人たちなのであろうか。三菱総研では、毎年大規模な生活意識調査(※2)を行っている。最新調査結果である2017年調査結果を用い、三大都市圏に住むロスジェネのうち、移住を検討している層とそうではない層を比較してみた。

すると、地方に移住したいと考える三大都市圏のロスジェネは、仕事も余暇も頑張る層であり、仕事上のストレスを抱え、今後は社会貢献や充実感の得られる仕事をしながら、余暇を楽しみたいと考えていることが分かってきた。

彼らの特徴を3つの側面から紹介したい。1つ目は、仕事観である。彼らの現在の状況について特徴的なのは、「出世を常に目指す」、「終業後に予定があっても、急な仕事が入れば残業する」比率が高く、ストレスを感じながら仕事をしており、今後の意向としては、「自分や家族の時間を優先できる仕事につく」、「満足感や充実感のある仕事をする」、「社会貢献できる仕事をする」比率が比較的高い(図表2)。

移住を検討している層は、就職氷河期を経験してきた彼らの中で、ひと際、出世をするために残業もいとわず、したがってストレスを感じている人たちのようである。それゆえ、今後は出世よりも仕事上の充実感・社会貢献を優先、また、仕事以外の時間を大事にしたいと考えている。

2つ目は、余暇の過ごし方である。移住を検討している層には、余暇は比較的家の中で過ごさず、スポーツや趣味を楽しんでいる人が比較的多い。今後の意向としては、それらに加え、地域活動や社会活動、資格取得などの学習もしていきたいと考えており、アクティブに余暇を過ごしている層だといえる(図表3)。

3つ目は、生活観である。生きがいの種類を聞くと、余暇・趣味や仕事の割合が比較的高く、特にないとする人の割合が低い。また、生活満足度をみると、食事や健康、自分の能力の発揮、余暇・趣味、レジャーの過ごし方などで満足度が低い(図表4)。

冒頭に登場してもらった田中さんは、移住したことにより、趣味などの余暇の時間を大事にしながら、社会貢献につながる・充実感のある仕事を幸運にも手に入れ、満足度の高い生活を送っているケースといえるだろう。

※2 mif:(Market Intelligence & Forecast:生活者市場予測システム)の略称。2011年から毎年6月に設問総数約2000問、20歳から69歳を対象として日本の縮図となるような3万人を対象に実施している生活者調査。