インターネットを通じて働きたい個人と、仕事を依頼したい法人をつなぐクラウドソーシング。自然豊かな環境で子育てをしながら東京の仕事を受注する。そんな自由な働き方が現実になりつつあります。
【中野】私は女性が企業で活躍する難しさを発信してきたのですが、この1年程度で「働き方などを見直す気配がない会社のことは見限って外に出る」という動きが活発になっているように感じます。転職市場がよくなっていることと、女性活躍推進法で女性管理職候補を外から確保しようという追い風もあるようです。加えてフリーランスや業務委託という形で柔軟に働く人も増えているという印象です。
【秋好】企業側もこの1~2年で、文脈が変わってきたと思います。今までは女性の働き方や新しい働き方は、福利厚生や弱者救済という文脈で語られることが多かった。それが企業の競争戦略上、時短勤務や在宅勤務も認めながら女性に活躍してもらうことが必要というふうに変わってきました。インターネットを通じて仕事を見つけて、それなりに食っていける働き方というのは10年前にはなかったわけですが、確実に増えています。
【中野】一方で、仕事と報酬の関係を明確にして、「仕事を切り出して外部の個人に委託する」という文化は、まだ日本企業に根付いていないのではないでしょうか。私自身、新聞社を2015年の3月に辞めて、会社員として働きながら、フリーランス的に隙間時間や土日にジャーナリストの仕事をしてきました。メディア特有かもしれませんが、原稿執筆や出演依頼では、報酬が事前に提示されず、振り込まれて初めて金額を知ることもあります。企業側は変化しつつあるのでしょうか。
【秋好】社員のリモートワークを認める大手企業が出てきたこともあり、少しずつ仕事を切り出しすることが根付き始めています。いままで、クラウドソーシングを使うのはIT系のベンチャーや中小企業が中心で「社員として採用できないから」という理由が多かった。でも、この1年で、新規事業立ち上げなどに取り組む大手企業の利用が増えています。集合知やいままでアプローチできなかった才能を生かしたい、自分たちでは出しえなかったアイデアがほしいという目的で外部の人材も生かしたいという流れです。
【中野】とはいっても、個人に発注することに抵抗感のある企業も多いのではないでしょうか?
【秋好】弊社では、いったん我々が受託して、ランサーさんに発注するというスタイルで信頼性を確保する枠組みを作っています。返信率95%、納品率95%以上など、統計的なデータを使って信頼できる個人を認定する「認定ランサー」という制度も取り入れました。
【中野】信頼性を担保する仕組みがあると企業の利用も増えそうですね。一方で、ランサーさんの中の格差がどんどん開きませんか。生きていけるだけの収入を得られるのはほんの一部で、限られた人たちだけの活躍の場になってしまう可能性はないでしょうか。
【秋好】クラウドソーシングでどれくらいの収入を得たいかは人によって幅があります。確かに、プログラマーや翻訳などはある程度能力がないと仕事を任せてもらえない。一方で、ライティングの仕事などは、最初は特別なスキルを持っていなくても、担当ディレクターが「もっとこういうふうにしたらいい案件取れますよ」とコンサルティングをするとスキルが上がっていく方もいます。