娘・大塚家具vs父・匠大塚 "抜き打ち検査"

まず訪れたのは、大塚家具の銀座本店。銀座地区の家具・インテリアの専門店としては最大だという。

早速、最上階から順番に見て回る。7階はベッドフロアで、高級ホテルでも採用されているシモンズのベッドがずらり。6階はプレミアムブランド、5階はラグジュアリー・クラシックブランドと、いかにも高級そうな家具・インテリアが並ぶ。IKEAを意識してか、スタイル別に家具がコーディネートされている。しかし個性的な家具が多いせいか、ゴテゴテと詰め込み気味な印象が否めない。値段は、頑張れば手に入りそうな価格帯のものもある。

さらに、4階はシンプルデザイン、3階は北欧や日本の木の家具がスタイリングされている。ようやく「これくらいなら自分の家に置いても違和感ないかも」と、なぜかほっと一安心した。

2階はカーテンやじゅうたん・カーペットなどファブリック類が展示。相談スペースで、何かをオーダーしているのだろうか、年配の男性が担当者と熱心に相談をしていた。

1階は照明器具や小物など。フロアの片隅に、デッキチェアやガーデンテーブルが、押し込められるように置かれているのが、侘しい。銀座の一等地で賃料が高く、なるべく多くの商品を並べたいという気持ちになるのはわかるが、「高級家具の価値観を提示するショールーム」というよりは「いろんなものが効率よく並べられた家具置き場」のようになってしまった印象だ。

訪れたのは、平日の日中ということもあって、人影はまばらで、ちらほら見かける客も銀座という土地柄のせいか、裕福そうなシニア層が多い。

全体的な印象としては、高価格帯から低価格帯までいろいろなブランドが並んでいるが、消費者自身が明確なコンセプトを持っていないと、どれを選んでいいのかわからなくなってしまう。大塚家具で家具選びをするのであれば、プロのインテリアコーディネーターを活用するのがよいだろう。数万円で対応してもらえるはずだ。

続いて訪問したのは、大塚家具の銀座本店から歩いて10分ほどの匠大塚の日本橋ショールーム。オフィスビルの一角にあるため、まずは所定のフロアで受け付けを済ませ、担当者とともに上のフロアに移動する。希望すれば、その担当者がフロアも案内してくれる。

「匠大塚」で販売されていた馬の置物。価格は税込みで41万5800円だった。

オフィスビルということもあってか、大塚家具の銀座本店以上に人影はない。

しかし、そこには「高級家具かくあるべし」という世界が広がっていた。いかにも高級そうなソファやテーブル、大皿、置物、蒔絵の衝立(オーダー可)、いわゆる昭和の嫁入り三点セットと言われた整理箪笥、衣装箪笥、鏡台などなど。大塚家具のシャンデリアは「これどうやって拭き掃除するんだろう」と思ってしまうようなモダンでおしゃれなデザインのものが多かったのに対して、匠大塚では「ザ・シャンデリア」とでも呼称したくなるような、万人が思い浮かべる高級シャンデリアがこれでもかと並べてあった。

一体、イマドキ誰が買うんだろうと思ってしまう「昭和を感じる品々」も多数あり、「この親父センスを久美子氏は嫌がったのか」などと邪推してしまうが、ブランドが顧客に提案したいイメージは明確で、見て回るだけでも非常に面白い。特徴的なのは、匠大塚ブランドが前面に押し出されているものの、メーカーの名前はよく見ないとわからないぐらいに控えめであったことだ。大塚家具ではブランドが数多く並び「あとはお客様が選んでください」というメッセージを感じたが、そんな陳列とは対照的だ。