日本で「一人暮らし」の世帯が増え続けている。そのためか世の中には「孤独のススメ」のような書籍が多く出版されているが、「孤独」は心臓病、血管疾患、がんなど、ありとあらゆる病気のリスクを大幅に高める。気づかぬうちに、心と身体をむしばみ、寿命をすり減らすのだ。コミュニケーション・ストラテジストの岡本純子氏が孤独の危険性について警鐘を鳴らす――。

※本稿は、岡本純子著『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)の第2章「孤独は『死に至る病』」の一部を再編集したものです。

世界一孤独な日本人の“寿命リスク”が判明した

日本でも、独居老人が、たった一人で死を迎える「孤独死」が問題視されて久しい。物理的に孤立することで、体調に変化があっても気づかれず、適切なケアが受けられず、死に至ることへの恐怖感は多くの日本人に共有されている。しかし、本質的な問題は、一人で死んでいく「孤独死」ではなく、「孤独による死」である。

岡本純子さんの新刊『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)

「孤独」は、まさに「万病のもと」だ。気づかぬうちに、多くの人の心と身体をむしばみ、その寿命をすり減らしていく。アメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授(心理学)は2010年、148の研究、30万人以上のデータを対象とした分析を行い、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」とする結果を発表した。

そして、孤独のリスクは、(1)一日タバコ15本吸うことに匹敵、(2)アルコール依存症であることに匹敵、(3)運動をしないことよりも高い、(4)肥満の2倍高い、と結論づけた。

また、2015年の同教授の研究では、70の研究、340万人のデータをもとに、「社会的孤立」の場合は29%、「孤独」の場合は26%、「一人暮らし」の場合は32%も死ぬ確率が高まるとの結果を導き出した。2005年のオーストラリアの研究では、子供や親戚などとの関係性は長寿と関係はなかったが、友達が多い人は、ほとんどいない人より長生きすることがわかった。

▼うつ病、心臓・血管疾患、がん……深刻な孤独による健康被害

孤独による健康への悪影響は実に多岐にわたる。うつ病、統合失調症、薬物やアルコールの乱用といった精神的な疾患と同時に、心臓病、血管疾患、がんなど、ありとあらゆる病気のリスクを大幅に高めることがわかっている。

その影響についての医学的研究は星の数ほどあるが、例えば、以下のようなものがある。

●孤独は冠動脈性の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作のリスクを32%上昇させる。
●孤独な人はそうでない人より、20%速いペースで認知機能が衰える。
●孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは、孤独度が低い人の2.1倍
●孤独は、体重減少や運動による血圧低下効果を相殺する負の効果を持つ。
●孤独な人は、日常生活、例えば、入浴、着替え、階段の上り下りや歩くことなどにも支障をきたしやすくなる。