感情を持つには、さまざまな感情を実際に体感し、身体に「これが○○な感情なんだ!」としみ込ませる必要があります。そして本当に伝えたい感情が土台として整ったら、それを表現する準備ができます。準備といっても、実際のコミュニケーション場面では、一瞬にして感情が表情・動作として表れるので、意識的に準備するという感覚はないと思います。「あ~、いま悲しいな~」と思った瞬間に、悲しみの表情が顔に表れているでしょう。しかし問題なのは、本当に悲しいと思っても悲しみの表出があまりに微妙で相手に伝わらない、ということです。これも日々の心がけが大切となります。
悲しい・うれしい・怖い……さまざまな感情を抱くたびに、感情を味わうイメージで自分の身体に意識を向けてください。自分の身体がどんな動きをしているか確認してください。そしてそれを少し大げさに表現してみてください。そしてそれを再度自分で確認してみてください。次第に自分の感情をストレートに表現することに慣れてくるでしょう。さまざまな感情が刺激される映画を見たり、大切な人からの手紙を読み返したり、さまざまな思い出を呼び起こしてみたりしながら、体感を研ぎ澄ませてみてください。
また、なんの感情もないときでも、各感情を示す表情を作ってみたり、体の動きをやってみたりするのも、身体に感情を染み込ませる器を作る良い練習となります。形から入ることで感情の呼び水を作ることができるのです。
原則2:言葉とノンバーバル・シグナルとを一致させる
次の原則は「言葉とノンバーバル・シグナルとを一致させる」です。言葉とノンバーバル・シグナルとが一致していると、話している言葉が表情・動作により強調され、思いや感情が相手に正確にかつ相手にとって心地よく伝わります。逆に一致していないと、思いや感情が相手に正確に伝わらないばかりか、困惑や嫌悪を感じさせてしまいます。それでは、言葉とノンバーバル・シグナルをどのように一致させればよいのでしょうか?
ポイントは、「感情語と非感情語を意識して自己表現する」というものです。感情を表す言葉を発するときにそれに合ったノンバーバル・シグナルを表現すれば、その言葉の真実味が増します。「うれしい!」と言いながら、カラスの足跡ができた笑顔が生じていれば、あなたの喜びは相手に印象的に伝わるでしょう。「申し訳ありません」と言いながら、悲しみの表情や恥・罪悪感の姿勢が生じていれば、あなたの悲しみ・恥・罪悪感は相手に深く届くでしょう。