企業連合が電力の「地産地消」を支える

小田原では、14年に小売事業者の「湘南電力(株)」も設立された。当初、湘南電力は、エネルギー流通情報会社のエナリスが株式の99%を、サッカークラブの湘南ベルマーレが1%を所有して船出した。地域の電力を買い集め、地域に販売する役割が湘南電力に託される。ほうとくエネルギーの電力も湘南電力に売られた。

ところが、大口の事業者への対応はともかく、16年4月、家庭や商店を含むすべての消費者への小売りが自由化され、様相は一変する。個々の消費者への小売りは、ものすごい手間が求められるのだ。何千件、何万件という買い手のケアをし、必要な電力を届けねばならない。じつのところ湘南電力には一般消費者への小売り機能を期待できなかった。

そこで、小売りの販売窓口として名乗りを上げたのが、地元のLP(プロパン)ガス関連会社の「(株)古川」と、都市ガス会社の「小田原ガス(株)」である。両社はともに百年企業で小田原に密着し、小売りのノウハウを蓄積してきた。ガスから電気へと領域をひろげる。

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かくして、ほうとくエネルギーが発電し、その電力を湘南電力が買い、古川と小田原ガスが一般家庭や企業に販売する「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」が組まれたのである。コンソーシアムの結成を支援してきた小田原箱根商工会議所会頭で、老舗の蒲鉾メーカー・鈴廣の副社長、鈴木悌介氏は、次のように語った。

「ガス会社もエネルギーをトータルで把握しなくてはならない時代がきました。危機感が電力への参入の背景にあります。お客さんにすれば、都市ガスもプロパンガスも電力もワンストップで買えて、全部、地元の企業。なにかあったら、すぐに飛んできてくれる。安心できますよね。なおかつ、ここで買う分には原発の電力は入っていません。払った電気料金の一部は湘南ベルマーレをとおして地域に還元できます。そういうパッケージができました」

17年度に入り、コンソーシアムの中心、湘南電力の株式の8割を小田原市内の企業5社(小田原ガス、古川、ほうとくエネルギー、ニッショー、オーワンカンパニー)が取得した。文字通り、湘南電力は地元密着型の株主構成となった。残りの18%をエナリス、2%を湘南ベルマーレが持つ。エナリスの小林昌宏社長は、記者会見で「地域電力をひろげるには地元に託すのが一番だと思う。われわれは力の限り支えていく」と語った。エナリスにすれば、得意のエネルギーマネジメントに集中できるようになったといえようか。