日本の観光資源は「旧家のお宝」
全体のパイを大きくする場合、王道はみんなの能力水準をあげて稼げるようにすることですが、日本は少子高齢化が進み、労働人口が減るので、それだけでは間に合いません。そこで考えるべきは、わたしたちの代わりに稼いでくれるアセットがないかということです。ひらたくいえば「働かなくてもお金が入ってくる仕組み」です
真っ先に思い浮かぶのは観光資源でしょう。日本のインバウンド観光客数も2017年には2800万人を超え、5年で3倍になるなど急成長していますが、日本より人口の少ないフランスやスペインは日本の3倍以上のインバウンド観光客を受け入れています。たとえば観光業などでお金がどんどん入ってくれば、1人ひとりが稼ぐ力をつけるための再教育への投資もできます。
まだ発掘されていない観光資源は、旧家に眠っているお宝のようなものです。時代の変化で家業がたちゆかなくなった旧家で、子どもがアルバイトをしながら学費を稼いでいるが、仕事をしながらだと思うように勉強も進まない。でもそこでお父さんが気づくわけです。うちの蔵にはお宝が眠っているじゃないか、と。ためしに入場料をとって近所の人に見せたら、評判になって遠くからも続々と人訪れるようになった。その結果、この家には収入がもたらされるようになり、子どもは受験勉強に専念できるようになって希望の大学に進み、よい仕事につくことができるようになった。資産を有効活用するとこういう好循環が生まれるわけです。日本は幸いにして眠っているお宝がある旧家です。ベーシックインカムの導入の是非を問う以前に、まずはこうした「お金のなる木」をつくることに時間をさくべきだと思います。
稼げる人が逃げてしまっては元も子もない
AI(人工知能)の普及によって失業者が大量に増えるので、そこにベーシックインカムのようなセーフティネットが必要になるという議論もあります。AIと補完的に必要になってくる仕事ものも多いので、技術的失業についてはそこまで心配することはないとわたしは考えています。ただし、その新しく生まれる仕事が今ある仕事よりも稼げるとはかぎりません。
より稼げる人と、そうでない人の所得水準が二極化していくという見方はおおむね正しいと思われます。所得が下がってしまう人がより稼げる仕事につくには、その間の生活を下支えするだけでなく、何らかの能力開発への支援や職業機会の提供も必要です。それには月7万円程度の給付ではまったく不十分でしょう。となると、やはり国全体の富を増やしていくことが先決です。AI時代にはものすごく稼げる人も出てくるわけですから、その人たちから税金をとってベーシックインカムの財源を充実させるのがいちばん簡単なわけですが、そんなことをすれば彼らはタックスヘイブン的なところに逃げてしまいます。