メモの習慣を身につけたのは、入社3年目です。本社の国内旅行部で宿泊プランなどの商品づくりを担当し、品質を維持したまま安く泊まれる「旅路クーポン」という商品を企画しました。ただ、広告代理店が持ってきたコピーがピンとこないのです。けっきょく自分でコピーを考えることにしましたが、そのとき参考にしたのが電車の中吊り広告でした。

<strong>JTB社長 田川博己</strong>●1948年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒後、日本交通公社(現JTB)入社。取締役営業企画部長、専務などを経て現職。異動のたびに後任者に丁寧なメモを残してきた。
JTB社長 田川博己●1948年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒後、日本交通公社(現JTB)入社。取締役営業企画部長、専務などを経て現職。異動のたびに後任者に丁寧なメモを残してきた。

中吊り広告はインパクトのあるコピーの宝庫です。ところが、通常は2日で入れ替わってしまう。ですからおもしろいと感じた言い回しや表現があると、電車を降りてすぐにメモするようにしました。それらをヒントにつくったのが、「泊って食べてポッキリ5000円」「旅情、満腹、5000円」といったコピーです。