地方在住の親がヘンだと思ったらココへ電話

遠く離れて住む両親に電話をした際、対応がどうもおかしい。もしかして認知症ではないかという疑いが芽生えるが、仕事が忙しくてなかなか帰る機会がない。そのような状態になったら、「認知症初期集中支援チーム」を活用するのも1つの方法だ。

これは2015年から厚労省が始めた取り組みで、支援チームは保健師や看護師など、国家資格を有する資格者複数人と認知症サポート医で構成される。家族や周囲の住民からの「認知症の疑いがある」の連絡に応じて訪問。認知症かどうかを評価し、適切な医療や介護サービスにつなげていく。現在、全国で3~4割程度の普及だが、将来的には全国すべての市町村に設置する方向で進められている。

「まずは親の住む市区町村の役所に電話して、その地域に集中支援チームがあれば、訪問を検討してくれます。仮に集中支援チームがなくても、しかるべき相談先を紹介してくれるはず。電話一本ですべて解決はしないけれど、必ず解決のきっかけをつくってくれる。1人で悩みをためこまず、地元の役所に相談すべきでしょう」(伊古田氏)

また遠隔地にいる親が認知症になったら、自分の家に引き取ることも考えるかもしれない。しかしその場合、慎重な判断が求められる。

「今まで一緒に住んでなかった親が認知症になったからといって、急に同居を始めると、大半の家庭は破綻します。都会の狭いマンションに閉じ込めたりすれば、認知症の人は我慢できず夜中に騒いだりする。それまで営んでいた生活が送れなくなり、血のつながらない配偶者にとっては相当のストレス。離婚も珍しくありません」(同)

それよりも認知症患者専用のグループホームなどに入居したほうが、家庭的な雰囲気のなかでゆったり過ごせる。「自分の目の届くところで親の面倒を見る」という責任感を捨て、しかるべき施設に入れるほうが、お互いにとって幸福というケースは少なくないのだ。

阿部和穂
1963年生まれ。武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳と薬。近著に『認知症 いま本当に知りたいこと101』(武蔵野大学出版会)
 

伊古田俊夫
1949年生まれ。勤医協中央病院名誉院長。社会脳科学の立場から認知症の臨床研究を進める。近著に『40歳からの「認知症予防」入門』(講談社ブルーバックス)
 
(撮影=金子山 写真=iStock.com)
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