面接質問「日本にサッカーボールは何個あるか?」
もう1つの変化が、16年から17年にかけての、“働きやすさ”や“ホワイト企業”への意識の高まりだ。その端緒になったのは15年に起きた電通の若手社員過労死事件。ランキングでも広告業界の人気は急落。16年のランキングでは電通が14位、博報堂DYグループが22位に位置したが、17年は電通が39位、博報堂が38位へと転落している。ある大学院生は「政府による“働き方改革”の動きもあり、世の中の動きがわかっている学生は、一昔前に流行したコピーの『24時間戦えますか』なんていうマインドはもう持っていない。男性も、付き合っている彼女や婚約相手に頼まれてワーク・ライフ・バランスの取り方を考えるようになってきている」と話している。
加えて、北野氏はベンチャー企業の今後の可能性についても言及する。「成長途中のベンチャー企業に身を置くことが、後々大きな価値となることもあります。たとえば、かつてヤフーが企業として飛躍を遂げた1997~99年当時に働いていた人というのは、ベンチャーの成長と成功のノウハウを知っている人間として、現在の転職市場でも引く手あまたです」。終身雇用神話が崩壊しつつある今、学生に人気の企業も、親世代とは大きく変化してきているのだ。
学生が志望する企業が変遷してきているのと同時に、選考方法にも新しい手法が取り入れられつつある。大手商社や日系の大手企業から複数内定をもらった男子学生によれば、エントリーシートでふるいにかけられることはほとんどないという。その背景には、ノウハウ本が増えてエントリーシートの書き方が画一化し、差がつかなくなってきていることが挙げられる。その代わりに、面接の比重が高まっている。そこで、面接手法に、2つの新しい方法が登場した。
1つが外資系コンサルタントや外資系金融で用いられる「フェルミ推定」だ。これは、「日本にサッカーボールは何個あるか?」「東京で消費されるペットボトルは1日何本か?」など、限られた知識から、いかに論理立てて結論を導き出せるかが問われる。
もう1つが「ケース面接」。ベンチャー企業やコンサルティング業界・投資銀行で用いられる場合が多く、「日本への観光客を10年で2倍にするには?」など、こちらも明確な答えのない問いが出される。フェルミ推定と同様に論理的思考力と、自分の思考の過程を説明するプレゼン能力が問われる内容だ。
人気企業も、その選考方法も日に日に変わる就活市場。「自分の頃はこうだった」とトレンドを押さえずに子どもの就活に口を出してしまうと、見当違いなアドバイスをすることになりかねない。対等な目線で、最新状況を見極める姿勢が求められている。
▼親世代には理解不能な最新就活事情
・トヨタよりもマッキンゼー
日系の大手企業よりもコンサルティング会社をはじめとした外資系企業に人気が集中。入社後3~4年で転職や独立を考えている学生が増えてきているため、日系企業に比べて短期で集中的にスキルアップできる外資系企業が注目されている。
・トップ企業内定者は3年春から就活開始
外資系企業は大学3年生の春から、日系企業でも夏や秋にはインターンを開始するケースが多い。本選考も外資系企業、ベンチャー企業は大学3年の9~12月に選考のピークを迎えるため、早い段階から動きだすことで就職活動を有利に進められる。
・リクナビよりもSNSで情報収集
学生がリクナビ、マイナビを中心に活動していたのは一昔前の話。最近ではこれらのサイトよりもツイッターや、みんなの就職活動日記(みん就)といった生の声が拾えるSNSや口コミサイトから情報収集する手法が主流になっている。
・「選考会」化するインターン
インターンは、選考直結型と本選考に影響しないものとに分類される。選考直結型はもちろんだが、直接採用につながらない場合でも社員に好印象を与えられると選考過程が免除されるなど、優遇措置がとられるものがあるので万全の準備をして臨みたい。