不妊治療経験者が見ても納得
『隣の家族は青く見える』は、人気女優の深田恭子さんが「妊活」に挑むという話題性もあって、放送前から気になっていました。
ただ、これまでのテレビドラマでは「作中で描かれる妊娠や出産、不妊に悩む女性の姿が、現実に即したものになっていない」という不満を、クリニックを訪れる患者さんや相談者から聞くことが多かったので、内容には不安でした。
しかし、第1話を見て、今回の作品は「とてもよくできている」と思いました。私は映像作品自体には詳しくありませんが、不妊治療の専門家としては、作品内の深田恭子さんと松山ケンイチさんが演じる「妊活カップル」の悩みや、特にレディースクリニック(不妊治療クリニック)の場面などは、「現実をよく調べて作られている」という印象を受けました。
このドラマをきっかけに、不妊に悩む人たちの現実について、より多くの人に知ってほしいと思いました。特に女性だけではなく、男性が考えるきっかけになってくれればと思います。
私はレディースクリニックという現場で、毎日不妊に悩む女性の声を聞いている生殖医療の専門医です。また、深田恭子さんがドラマで演じている35歳(これは深田さんの実年齢だそうですね)の時に不妊治療を経験しました。どうして『隣の家族は青く見える』がよくできていると思うのか――。その理由を、専門医の立場から解説したいと思います。
「深キョン35歳」のリアル
主人公の五十嵐奈々は35歳の働く女性で、夫の大器(松山ケンイチ)と不妊治療に挑む、というのがドラマの中心となる物語のようです。インターネットでは、「深キョン」がこの役を演じていることに対してのリアクションが多かったようですね。実際に、劇中の五十嵐奈々の年齢と、深田恭子さんの実年齢は同じらしいですが、あれだけ若々しい深田さんが「不妊に悩む35歳の既婚女性」を演じることに驚きが大きかったようです。
この驚きは、不妊治療の現場と重なっています。どういうことかというと、現実的に、不妊クリニックを訪れる方は35歳から40歳の女性が多いのですが、昔に比べて、驚くほど若く見える人が多いのです。