「(降圧剤で)がんになりやすくなる」

脳出血が減ったのは、人々の栄養状態がよくなったからだ。細胞を丈夫にするコレステロールの摂取量が増え、血管が破れにくくなっている。それなのに「血圧が高いと脳卒中になる」という思い込みだけは昔のまま。

「脳梗塞とは、血の塊が脳の血管に詰まる病気です。血の塊を吹き飛ばすには、血圧を高くして血が勢いよく流れたほうがいいはずです」(松本医師)

しかし薬で血圧を下げているので、かえって脳梗塞を患う人が増えているのだ。浜医師も次のように警告する。

「体は酸素と栄養素を血液から得ていますが、それを取り込むためには一定の血圧が必要です。それなのに降圧剤で血圧を下げすぎてしまうと、それが取り込めなくなる」

さらに怖いのが、薬そのものがもたらす副作用だ。降圧剤には種類がいくつかあり、現在の主流は前出のARBやカルシウム拮抗薬だ。これらの薬剤には炎症を抑える作用がある。

「免疫反応は、病原体や体内にできた異物から体を守るための防御システム。炎症は、免疫反応の重要な要素で、体にできた傷を治す働きです。ARBやカルシウム拮抗薬は炎症を抑制するので、これを飲むと炎症が目立たなくなり、一時的に健康になったかのようにみえる。しかし傷を治すための反応が起きないということは、傷を放置しているということですから、いろいろと不都合なことが起きます」(浜医師)

その1つが「がん」である。

「がんとはいわば体内にできる異物。免疫が正常に働いていれば、仮にがん細胞が生まれても小さいうちに排除できる。しかしARBやカルシウム拮抗薬を飲んでいると免疫が抑制されてしまうので、がんになりやすい」(浜医師)

感染症が全身に広がって死に至る「敗血症」も、免疫不全によって起こる。さらには高齢者が血圧を薬で無理やり下げた場合、脳に栄養や酸素が行きわたらず、認知症になりやすいという説もあるのだ。

浜 六郎(はま・ろくろう)
医師、医薬ビジランスセンター理事長
1945年生まれ。大阪大学医学部卒。大阪府衛生部を経て阪南中央病院に勤務。97年医薬ビジランスセンター設立。2000年NPO法人認証。著書に『高血圧は薬で下げるな!』など多数。
 

松本光正(まつもと・みつまさ)
医師、サン松本クリニック院長
1943年生まれ。北海道大学医学部卒。医療生協さいたま浦和民主診療所勤務、同所長などを経て現職。著書に『高血圧はほっとくのが一番』『検診・手術・抗がん剤の前に読む「癌」の本』など。
 
(撮影=澁谷高晴、篠原沙織)
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