(2)組織の「特性」によって最適な目標レベルは異なる

次は、目標設定です。「1年後に売上2倍」など、高い目標を掲げて大きな成果を狙ったものの、全く成果に到達しなかったという経験はないでしょうか。これは恐らくは、メンバーのレベルや組織現状を考慮せず、目標設定に失敗した典型例です。

図1のように、組織特性によって最適な目標レベルは異なり、目標レベルによるメリット・デメリットも異なります。これらを踏まえて、目標レベルを決めることが必要です。

高いレベルの目標設定が適している組織特性は、チャレンジを推奨するとともに、失敗を責めない風土があること。特に後者の「失敗を責めない」要素が重要です。多くの企業で「チャレンジを応援します」という耳障りのよいフレーズを耳にしますが、実は一度でも失敗をするとマイナス評価の対象となるケースもあります。

このような状態では、チャレンジをすることは自らを危機に追い込むことと同義。大きな成果を狙える一方で失敗確率もそれなりにある高い目標に向かう動きを生むためには、安心して失敗できる環境が不可欠なのです。

また、目標達成に必要なスキルを習得するためのサポート体制があり、目標達成したことを評価するしくみも必要です。高いレベルの目標達成には、従来の延長線上ではないアイデア・スキルが必要ですがこれはOJTでは習得が難しい要素であるため、その習得をサポートするためのしくみが必須です。この2つの特性がない状態での高い目標設定は、高い目標設定のデメリットでもある当事者のモチベーションダウンのみを招きかねません。

高いレベルの目標設定が適しているのは一部

もう一方の現実的なレベルの目標設定は、なんらかの理由で現状を変えるチャレンジを躊躇するメンバーが多い組織に適しています。具体的には、スキルや経験不足でチャレンジのための自信がもてない場合。これは、ベテランや熟練の技術が重視される業態・企業によくみられます。また、そもそも改善やチャレンジの楽しさを知らない場合。自ら変化を求める企業は少数派で、多くは外部環境に求められて変化に着手します。

しかし、規制が厳しい業態や競合が参入しないニッチ市場は変化へのニーズが限定的であることが多いので、変化への楽しさも知らないケースがあります。あるいは、過去の失敗で大きなしっぺ返しを受けた経験がある場合。これは、高い目標に適した組織の要素である失敗に寛容な環境とは真逆のケース。過去にさまざまな提案をしたものの受け入れてもらえなかったというのも、このケースに含まれます。実はこれは、改善マインドを失う主要因として多くの企業で見られるものです。

高いレベルの目標設定が適しているのは、一部の企業です。少なくとも変化へのチャレンジの入り口では現実的な目標設定を行い、それを達成することで成功体験とスキルを積んでいき、段階を追って高い目標設定にシフトすることをおすすめします。