EXILEのあだ名は「民工団」

林丹選手は色黒で痩せマッチョ、眼光は鋭く、おしゃれなひげを蓄えている。昨今の日本人であれば、「EXILE系だね」と多くの人が思うのではないか。

山田泰司『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』(日経BP)

ところが中国でこのEXILE系、すなわちちょいワルの色黒系の受けは、あまり芳しくない。そしてその理由も、「まるで民工のようだから」というものなのだ。

EXILEには「放浪兄弟」という正式な中国語名があるのだが、ネットでは早くから、「民工団」と呼ばれている。真っ黒に日焼けして、痩せているさまがまるで、都会の工事現場にいる民工のようだ、というわけである。

一方で、林丹選手については、工事現場と並んで近年、出稼ぎの人たちを主力の働き手としている宅配便の配送員になぞらえる書き込みが並んだ。「前から思ってたけど、林丹って、電動バイクで町を走り回ってる配送員の民工みたいだよね、真っ黒で」というような書き込みが殺到したのだ。

EXILEのニックネームと林丹選手に対する書き込みで露呈したのは、中国で好まれる男性像、そして中国人、とりわけ都会の人々による、農村や出稼ぎの人たちに対する蔑視である。

色白で太っているほうが人気がある

中国では基本的に、白くてツルッとした肌感の男が好まれる。「ピチピチのしっとりした肌を持つ若い男」という意味を表す「小鮮肉(シャオシェンロウ)」という言葉が、なんと2015年の流行語に選ばれたほどだ。この言葉が流行ることを見ても、「白くてツルッと」を好む傾向に拍車がかかってきたのが分かる。

背景には、農民や出稼ぎのように日に当たることなく稼げる人間の方が文化的、文明的だという考え方があり、そのようなものに対するあこがれがある。

そして、あまり痩せぎすよりは、むしろ太っている男の方が人気がある。これも、太っているのはたっぷり食えていることを象徴するものだというイメージから来ている。引き締まった色黒のEXILE系と、色白の小太り系のどちらが好まれるかと言えば、中国では断然、小太り色白系なのである。

だから、林丹選手の容姿は本来、中国人の好む男の容姿ではない。ただ、バドミントンという国民的スポーツの英雄だったためにこれまでは容姿を茶化す声が聞こえなかったが、不倫問題で重しが外れると、大衆の本音が一気に噴き出したというところなのだろう。

国や地域によって好まれるタイプが違うのは当然。不倫で批判を浴びるのも仕方がない。しかし、EXILEやスポーツ選手の不倫の話をしていたはずが、それはあくまでダシにすぎず、いつの間にか、「豊かな色白=都会人」が、「貧しい色黒=民工・貧困層」をバカにするという話にすり替わってしまう。そこに、中国に横たわる断層の深さを垣間見るのである。

豊かな都会人と民工・貧困層との関係で、いつのまにか話がすり替わっているということについて、私がもう一つ気になっていることがある。民工夫婦を取り巻く厳しい環境に同情を寄せるふうを装いつつ、その実、内容は官能小説に限りなく近いメディアやブログの記事の存在である。