地質図作成用のフィールドワークノートとA4サイズのルーズリーフの2つを使い分けています。「地道にコツコツ積み上げる」ためのノートと「自由な発想を生むため」のノートと考えてもいいかもしれません。

京都大学教授・火山学者 <strong>鎌田浩毅</strong>●1955 年、東京生まれ。通産省を経て97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。専門は火山学・科学コミュニケーション。近著に『一生モノの勉強法』がある。
京都大学教授・火山学者 鎌田浩毅●1955 年、東京生まれ。通産省を経て97年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。理学博士。専門は火山学・科学コミュニケーション。近著に『一生モノの勉強法』がある。

地質図作成用のフィールドノートには、通産省(現・経産省)地質調査所のものを使っています。地質記録の取り方には、100年以上もの伝統が受け継がれた厳粛な決まりがあります。まず登山中に立ったままでも書ける小ぶりで堅牢な表紙、雨に濡れても破れない丈夫な中紙であること。加えて、必ずペンのインクは「墨(汁)」です。墨は炭素でできているので、未来永劫に残るのです。というのも、このノートが最終的に、調査結果を確実に記録・保存し、研究用の一次データとなる原本になるからです。そればかりでなく、土地の地質調査の唯一の記録になったりもするので、消失や誤読を防ぐために記録様式を整え、確実に保存しておく必要があるのです。

このフィールドノートの直接のアウトプットは国が発行する地質図などですが、これは一つ完成させるのに10~15年という長い年月を要します。しかし、目的は決まっているので、時間をかけてコツコツ調査を続ければ確実に結果は出せる。色鉛筆の色にこだわったり、自分の主観を入れ込んだりする工夫をしていますが、基本的には、100年以上かけて積み上がってきたスタイルを踏襲しています。

自由に発想を広げるより、事実の積み重ねが重要なので、正確に記録したノートが不可欠なのです。私はこれを「保険仕事」と呼んで、自分の生活の基盤と考えています。

そして仕事にはもう一つ「勝負仕事」と呼ぶべきものがあります。10年取り組んだ結果がゼロになるか100になるか予想できない仕事のことで、自分なりの視点でテーマを設定する研究などがこれにあたります。

ノーベル賞級のアイデアなど、非常に優秀な人が100個考えても1個も当たらないものです。こちらは柔軟な発想や新しい視点が重要なので、頭を柔軟に使えるノート、つまり先に挙げたルーズリーフが適しているわけです。

ルーズリーフには、バインダーなどに綴じないで、そのまま何でも書き出します。関連資料があればコピーするか、切り取ってルーズリーフにホチキスで留め、しまうときはプロジェクトごとに分けてクリアフォルダに入れておきます。

発想としては、パソコンのデータの保存方法と一緒です。プロジェクトのクリアフォルダに、関連するルーズリーフや情報を入れるようにしています。ただし、パソコン自体はあまり信頼していません。フリーズしたり、データが消えたりと危険です。

ルーズリーフの良さはなんといっても出し入れが自由自在にできること。講演で話す内容や次の著作のアイデアなど、思いつくまま書いても、後から分類できるし、日付とページだけ記入しておけば検索に困ることもない。テーマがまとまってきたらホチキスで仮綴じし、保存するものはバインダーに移して、使い終わったものは捨ててしまえばいい。

ルーズリーフにはもう一つ、各ページを並べることで俯瞰できる良さがあります。たとえば「火山」というテーマから新しい研究成果をだしたいと考えたときです。

(プレジデント編集部=構成 的野弘路、熊谷武二=撮影)

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