前職で業界紙の記者をやっていた名残もあって、ノートは文庫本と同サイズのA6判を使っています。他の記者も同じサイズを使っていました。上着のポケットにも入り、いつでも持ち歩いて書き込んだり見返したりするのに都合がいい大きさです。

作家 <strong>奥野宣之</strong>●1981年、大阪府生まれ。『情報は一冊のノートにまとめなさい』がベストセラーに。近著に『だから、新書を読みなさい』。
作家 奥野宣之●1981年、大阪府生まれ。『情報は一冊のノートにまとめなさい』がベストセラーに。近著に『だから、新書を読みなさい』。

僕はこの小さなノートを自分で工夫して、備忘録、スケジュール帳、アドレス帳、メモ帳などの機能をすべて一冊でまかなえるようにしています。

スケジュールはカレンダータイプの書式をA4用紙の裏表に出力して四つ折りにし、ノートのページをテープで貼り合わせてポケットに入れておきます。また、A4までの書類なら折ってページに貼り付けることもあります。ちょっと大胆ですが、受け取った名刺も「元会社員、おじいちゃん」などと書き込んで、ノートに貼り付けることにしています。

ページに記入するのは打ち合わせの内容、ふと思いついたアイデア、受講したセミナーの記録、映画や読書の感想、本の購入リストなどあらゆる情報で、カテゴライズはしません。日付を記入してから本題に入り、書き終わったら区切り線を引く。次は区切り線のすぐ下から書く。ルールらしきものはそれだけです。

一冊のノートを使い切るペースはまちまちですが、平均して2週間ほど。使い終わったノートは、表紙に通し番号と使用期間の日付を入れて保管し、内容を検索しやすくするためにデジタル索引を作ります。ノートの表紙に書いた通し番号と日付、内容の要約、タグになるキーワードをエクセルに入力し、キーワードや日付で検索して該当するノートを見つけるのに使います。

ありとあらゆることを一冊に集約する奥野さん。パソコンにデータベース化することでノートは強力な武器となる。
ありとあらゆることを一冊に集約する奥野さん。パソコンにデータベース化することでノートは強力な武器となる。

このデータ入力には一冊に30分ほどの時間を設けています。一見面倒でもノートを探し回る時間や検索する手間を省けるので実は効率的でもあります。このような小さいことの積み重ねをコツコツ続けていけば、いつかもの凄いことになると僕は確信しています。

「ノートの中にすべての情報を一元化する」というやり方に行き着いたのも、やはり活用することが大事と考えたからです。毎朝新聞を読んでいても、受け身のままでは内容を活用することができませんよね。大事なのはいろんな情報を有機的につなげながら「なるほど」とか「いや、俺はこう思う」という自分の反応だと思うのです。

2010年になって挑戦したのが、日経新聞の朝刊コラムの抜き書きです。少ない文字数で、説得力のある文章を書くにはどうしたらいいのか考え、すべてをノートに書き写して分析をしています。たとえば、ある日のコラムを分析してみると、「甲子園での球児の夏はまもなく終幕」とか「漫画『とめはねっ!』が流行っている」という情報と著者の主観だけで構成されています。目新しい事実はほとんどないといっていい。しかし文章の力量で読ませてしまう。いい勉強になっています。

(プレジデント編集部=構成 的野弘路、熊谷武二=撮影)