大改修のための3つのポイント

悪評を払拭し、目標管理システムを機能させたいのであれば、かなり大幅な修復工事が必要である。やるべきことを以下に列挙する。

1.目標管理システムを人事評価や部下の能力開発のために活用することをやめる。もちろん、目標管理システムを通じて得られる情報を活用することを、控えよといっているのではない。得られる情報はあくまでも参考情報と位置づけ、すでに存在している人事評価や人事考課の仕組みに大きなウエートをおけばよい。部下の能力開発は、目標管理とは別個に行うことが可能である。事実、多くの企業でコーチングやメンタリングの仕組みが開発され運用されている。この仕組みに加えて、OJTや人事異動、教育・研修を通じて部下の育成は可能と思われる。

2.人事評価や部下の能力開発は別システムで行うことにすれば、現行の目標管理システムに組み込まれている定性的な目標、例えば、「チームにおける協調性」「目標達成に向けてのコミットメント」などはすべて、目標管理システムから除外できる。そうすれば、目標として残るのは、数値で測定できる目標のみとなる。

このように目標管理システムが当初目指した基本形に戻すことができれば、上司と部下の間で、現在直面している経営環境についての情報を共有し、組織に要求されている成果(売上高の増加、マーケットシェア拡大、新規顧客の獲得、歩留まり率の向上など)に焦点をあて、部下のやる気を引き出しながら、納得のいくできる定が可能となる。ありきたりだが、納得のいく目標設定は難しい。だからこそ目標設定に関与する人すべての真のコミットメントが不可欠なのである。

3.ただ、数値で表現される目標と言っても、活動の結果としての目標値を決めるだけでは目標の達成はできない。わかりやすくいえば、「『結果指標』を設定するだけでは、目標は達成できない」のである。

例えば、歩留まり率99.995%の目標(結果指標)を達成するには、「ちょこ停」(製造工程が何かの理由で製造設備が短時間停止する状態)に関する指標が目標をクリアできているかどうかを確認する必要がある。しばしば停止する工程で、高い歩留まり率を達成することは困難だからである。確実に結果指標が得られる方向に物事が進んでいるかどうかを確認するには、歩留まり率という結果指標に加えて、「ちょこ停目標」という「先行指標」を目標の中に組み込む必要がある。部下は、設備のメンテナンスに注力すれば良い。上司は先行指標の達成度をモニターするとともに、「歩き回りによる管理」(management by walking around)によって、歩留まり率の目標達成を目指すのである。

自社で設定している目標をチェックしてほしい。数値目標の多くが結果指標であれば、目標達成は難しいと考えるべきである。適切な先行指標(実は、その設定は意外に難しいが)を含んだ目標管理システムに修正する必要があるだろう。

目標管理システムは、良かれと思われた修正を繰り返すうちに、良からぬ方向に変容してしまっている。基本に戻り、目標達成のためだけに目標管理システムを利用することが肝要である。(本連載は隔週月曜日に掲載。次回は12月11日の予定です)

加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授(神戸大学名誉教授、博士(経営学))
1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。
 
(写真=アフロ)
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