手法は単純である。香港などの消費税が課税されない国・地域でインゴッドを買って、消費税が課税される日本で売りさばくのだ。香港でインゴットを購入、日本でまったく同じレートでさばくことができれば、ザックリ8%(消費税分)の粗利益である。インゴッド取引は国と国とをまたぐ税関をスルーできるかが勝負の肝となる。日本に持ち込むことができさえすれば、あとは表の市場で取引するだけだ。インゴッド取引は密輸さえうまくいけば、うまみのある取引である。

国税を搾取する悪党たち

まず密輸業者のAが香港で1億円分のインゴットを購入する(1)。次にAは、香港から直接に日本へ行くと税関に怪しまれるため、韓国を経由し観光客のふりをして日本に持ち込む(2)。韓国経由では韓国の空港トランジット(乗り換え)エリア内で、別の運び屋にインゴットを引き継ぐケースがほとんどだ。下着を加工するという初歩的な隠蔽から、肛門から腸に押し込むというプロの手口までさまざまだが、日本の空港にある税関をパスするのは難しくないようだ。税関をパスした後、運び屋から密輸業者がインゴットを受け取って仕事が完了したことになる。

Aは日本の金買い取り業者Bに消費税を含めた1億800万円で売却する(3)。このとき密輸の成功によりAの利益800万円が確定する。Bは正規の手続きで、再び1億円分のインゴッドを香港のAの支配下にある金買い取り業者Cに輸出する(4)。このとき消費税は免除される。BはCへの売却差額またはAからの協力コミッションにより、確実に利益を獲得する。

最後に、Bは日本国内にて税務署へ消費税申告をする。その際に、Aからの仕入れにかかった800万円を税額控除できる。またはBは消費税分の還付を受けることができる(5)。つまり金買い取り業者Bは消費税800万円分をAに支払っても損失がでないことになる。これで一回りの取引は終了だ。

このスキームを概観すると、一見、AとBが独立した関係だと見えなくもない。しかしAとBが継続して取引しているとなれば、立派なスキームとしてビジネスが成り立っていると見たほうがいい。つまりは、AとBがグルだという見方をすべきだろう。

こういった取引をループさせるとどうなるか。(1)から(6)までをグルグルと取引し、10回実行するだけで8000万円、100回実行すればなんと8億円の粗利を手にすることができる。1回あたりの密輸額を10倍にすれば手にする利益も10倍だ。もともと国民から徴収した税金をAとBがグルになって搾取するのだ。ボロ儲けの部類に入るだろう。