産業構造が激変したいま、企業に求められる多機能化とは、次の4つの機能を備えることです。

(1)価値提供……市場に価値を届ける販売やサービスの機能
(2)価値創造……商品を創造(製造)して価値を形にする機能
(3)価値基盤……人材や金融、物流など、ビジネスを支える機能
(4)価値情報……市場の情報を集積して分析する機能

これら4つの機能のすべてを自社だけでカバーするのか、あるいは他社と提携することでカバーするのか。

とことんニッチの分野を深耕する戦略もありますが、規模を追求するなら、やはり全方位的な機能の獲得が急務です。「自分の会社は販売するだけでいい」「つくるだけでいい」というやり方では、これからの事業環境を生き延び、成長していくことは難しいでしょう。

業界再編型M&Aから越境型M&Aへ

さて、産業構造が変わった現状を踏まえると、M&Aの戦略も変わってきます。

かつて会社の成長を目指したM&Aは、同じ業種で行われることが一般的でした。他の地域にある同業の会社を買ってエリアを広げたり、自社より小さな同業他社を吸収して商品ラインナップを拡充したりコストを削減したりする、いわば業界再編型のM&Aです。

業界再編型のM&Aは、業種の壁が高くそびえていて、戦うリングが限定的だったときにはとても効果的な成長戦略でした。

しかし、産業構造が変わったいま、その業界でトップクラスになっただけでは勝ち残ることはできません。業種の壁を飛び越えて自社で広範囲をカバーしてはじめて戦える体制が整えられるといっても過言ではありません。

これからの時代に必要なのは、同じ業界内のM&Aではなく、異なる業種・産業の企業と組んで多機能化を実現する越境型のM&Aなのです。

たとえばメーカーなら小売業と組んで消費者と直接つながったり、IT企業と組んでIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の取り組みを進めたりという展開が考えられます。好むと好まざるとにかかわらず、そうやって多機能化した企業同士が総力戦で戦う時代になってきているのです。

野球やサッカーなどのリーグ戦をイメージするといいかもしれません。