かつてはユーザーのニーズをつかむためには、顧客にヒアリングしたりアンケートを集計したりするなどの方法しかありませんでした。しかし、いまはITの活用で顧客の声にならない声まで把握することができます。

セブン-イレブンは、POSシステムや「nanaco」から得られるデータを分析して商品開発に活かしています。

たとえばPBは通常、NBより求めやすい価格で販売されます。しかし、セブン-イレブンのPBは、ものによってはNBより高い価格がつけられています。「すみれ」や「一風堂」といった有名ラーメン店と共同開発したPBのカップ麺は、日清食品のNBのカップ麺より高価格だったりするのです。

消費者のニーズを含めた市場の情報を集積して、適切な分析を行い、顧客サービスや商品開発、さらには経営戦略にまで活用していく。これからの産業構造のもとでは、それができる企業が市場をリードしていくのです。

中堅・中小企業がIT投資を行わない理由

ところが、ここでも中堅・中小企業のつらさが浮き彫りになります。

単独ではデータ集積が難しいのです。

経済産業省が中堅・中小企業に向けて、「IT投資を行わない理由」について調査をしたことがあります。上位に入ったのは次の理由でした(2016年版 中小企業白書概要より)。

1位:ITを導入できる人材がいない(43.3%)
2位:導入効果がわからない・評価できない(39.8%)
3位:コストが負担できない(26.3%)

どれも中堅・中小企業の実態がよくわかる切実な声ですが、結局はIT投資をする資金的な余裕がないということに尽きるでしょう。

中堅・中小企業が自社でIT投資をしてデータを集積・分析することが難しければ、それができるパートナーと組むしかありません。IT投資できる資金や人材をもち、分析に活用できるデータを保有する企業と組むことによって、産業構造が変化した後の世界で勝負することが可能になるのです。

竹内直樹 (たけうち・なおき)
株式会社 日本M&Aセンター 上席執行役員。2007年、日本M&Aセンター入社。2014年執行役員事業法人部長、2017年 ダイレクト事業部事業本部 兼 上席執行役員就任(現任)。入社以来、日本M&Aセンターが10年で売上が5倍となるなか、その成長を牽引し、100社を超えるM&Aを支援。産業構造が激変する現在、中堅・中小企業やベンチャー企業が一段上のステージへ成長するための支援を行う一方で、セミナーや講演を通じての啓発活動でも活躍する。著書に『どこと組むかを考える成長戦略型M&A──「売る・買う」の思考からの脱却と「ミニIPO」の実現』がある。