「北朝鮮以外」にも対応すべき問題は多い

トランプ政権の外交・安全保障上の関心は中東・南米・東欧等に傾斜しており、東アジア情勢を優先できる環境となっていない。

マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官やマティス国防長官らは対イスラム・中東地域の専門家で、増派を決定したアフガニスタンへの対応やISIS壊滅後のシリア情勢安定化に向けた地上軍の駐留問題など処理しなければならない案件が山積みとなっている。

ケリー大統領首席補佐官は元南方軍司令官で、南米・ベネズエラの政情不安への対処に関心が高いだろう。彼らは米ロ関係が悪化の一途を辿る中で、9月半ばから予定されている東欧地域でのロシアの大規模軍事演習にも神経を尖らせる必要もある。国内を見渡してもテキサス州を襲ったハリケーンへの対応に忙殺されている状況だ。米国には北朝鮮以外にも対応しなくてはならない問題が多い。

北朝鮮への軍事力行使に関するトランプ政権の「本気度」は極めて低く、今後も米国独自の追加制裁や国連における石油禁輸を含めた制裁の提案という善後策が講じられていくことになるだろう。トランプ政権は北朝鮮情勢で主導権を持った交渉を展開するというよりも、同盟国の日本とともにある、というメッセージを発しながら、北朝鮮問題について日本を北朝鮮の矢面に立ててお茶を濁していくものと予測される。

安倍首相とトランプ大統領は蜜月関係を演出してきているものの、実際にはトランプ政権が東アジア情勢に関心が低かったことは明らかだ。

日本はミサイル防衛システム強化や通常兵器のさらなる拡充など、この状況に乗じて平時なら中ロに反対されそうな防衛力を整備するチャンスを生かし、トランプ政権に東アジア情勢に関する外交・安全保障上の人事を早急に進めることを要請するべきだろう。

その際、米国の東アジア戦略全体の青写真を日本に有利に設計するため、わが国にとって都合がいい人物の登用をトランプ大統領に呑ませるべきだ。従来の日米の連携を演出するだけの見せかけの文言を並べる行為は不要だ。安倍政権はトランプ政権に対して対米追従姿勢を取るだけではない本当に影響力を行使することができるのか。

(写真=時事通信フォト)
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