自宅葬が激減し葬儀業者の比重が高まった
こうした変化が起きる背景には、寺と檀家との関係や近所づきあいが急速に希薄化しているという事実がある。20年ほど前までは、自宅に祭壇を設け、近所の人々の手を借りて通夜から葬式までを行う「自宅葬」がふつうだったが、近年は葬儀業者などの所有する斎場・会館を使用し、準備や運営もすべて葬儀業者頼みになった。東京に限ると、自宅葬はいまや例外的だ。
とりわけスペースが狭いマンションでは、自宅葬は難しいという問題もある。集会所を使えればいいのだが、予約が詰まっていて急な利用が難しいとか、そもそも管理規約によって、葬儀ができないようになっている場合も少なくない。
個性的な葬儀ということでは、宗教色をなくした「無宗教葬」も普及してきた。僧侶や神父などの宗教者が介在せず、読経や焼香などのセレモニーがないのが特徴で、故人が好んだ音楽を会場に流したりする「音楽葬」などがポピュラーだ。
だが、葬儀から宗教色を取り除くということは、その分だけ葬儀業者の企画力や司会などの演出力が問われるということだ。音楽葬を例にとれば、ただ音楽を流すだけではなく、故人の略歴を紹介したり告別式の弔辞を読んでもらったりする際に、内容をふくらませて感動的に演出する、スライドショーを効果的に使う、といった技術が必要になる。
葬儀業者に問い合わせをすれば、決して「できない」とはいわないだろうが、イベント運営に長けた会社でないと、がらんとした会場にただクラシック音楽を流すだけ、という寂しい葬儀になりかねない。音楽葬などの無宗教葬をきちんと企画・運営できる葬儀業者は、東京でも2割弱しかないといわれている。葬儀業者に正式な依頼をする前に、これまでの施行事例を聞き出しておくといいだろう。