「葬儀一式」は総額ではないことに注意

会場によっては「音楽禁止」などの規定があり、希望の斎場を使えない恐れが大きい、ということも注意点の1つだ。ちなみに都内にある6つの火葬場併設式場は、すべて音楽は禁止となっている。

葬儀費用のかかり方と認識のギャップ

そもそも「家族の死」という突然の事態を受けて始まるのが、葬儀というイベントである。ほんの1~2日の間に葬儀業者を決め、葬儀のメニューを選ばなければならない。当然、葬儀業者のほうは、遺族側のそんな事情を十分に心得たうえで、契約を取りやすいような仕組みを整えている。だが、短時間のうちに業界特有のやり方で契約を進めるため、どうしても行き違いやトラブルが起きてくる。

私のもとに寄せられる相談事で、圧倒的に多いのは「葬儀業者から最初に提示された金額と、最終的な請求額が大幅に違う」ということである。

たとえば「総額100万円で申し込んだのに、180万円の請求がきた」などという場合である。

別に悪徳業者に騙されたわけではない。葬儀業者の見積書のなかで「葬儀一式」と書かれている費用は、祭壇や棺代、人件費の合計であり、会葬者の数によって上下する「返礼品代」や「飲食代」などは、事前には確定しないので一式代には含まれていない。もちろんそのことについては見積書に記入してあるが、申し込む側は気づかないか、気づいても、何人参列すればいくらになるのかといった計算をきちんとしていなかったりするので、請求書を見て愕然とすることが多いのである。

たとえば返礼品については、東京の場合、「即返し」といって当日に香典返しをすることがあるが、1人当たり2500~3000円くらいの品を200人の会葬者に渡すとしたら、人数分の60万円ほどが上乗せされる。さらに、通夜振る舞い(参列者の70%と親族分を用意)と翌日の精進落とし(親族分のみ)を含めた飲食代は、70万~80万円ほどになる。

(構成/面澤淳市)