佐川国税庁長官は逃げずに記者会見に応じるべき

さらに財務省の説明を一貫して担ってきた前理財局長の佐川宣寿氏は、国税庁長官に昇任したが、長官就任の記者会見を開いていない。このような態度は直ちに改めるべきだ。記者会見こそ事後挽回策の柱。国会での質問より、記者からの質問の方がきつい。佐川氏はこの記者からの質問にきちんと答える義務がある。国税庁と言えば、税の徴収という最大の国家権力を行使する機関。そのトップが国民への説明責任を果たさないとなると、民主国家の政府機関は非常に脆弱になる。

国家権力を行使する政府機関が、安定的に存続するためには、暴力と恐怖で国民を抑え込むか、国民からの信頼を得るかの2つしかない。民主国家はもちろん後者だ。あれだけ「記録は廃棄した」「記録は廃棄したけど適切に処理した」「さらなる確認はしない」を連発した佐川氏が国税庁のトップに就いたことを、納税者である国民は納得するだろうか。僕を始めとする事業主は税務調査を受けるが、必ず記録の有無が問題になる。記録がなければ納税者の言い分は通りにくい。このときに国民は今後黙って税務署の主張に従うのか。財務省は自分たちは法令に従っていると主張するが、国民に対してだけ厳格な保存義務を定め、自分たちには甘い保存義務のルールを自分たちで定めた財務省の態度振る舞いを、国民は納得するだろうか。

佐川氏の国会での説明に国民の多くは納得していないだろうが、それでも佐川氏の行為は処分等の対象ではない。そうすると理財局長から国税庁長官への昇任は財務省内では順当な人事だ。しかし、それはあくまでも財務省内部の話であって、国民目線からすれば、佐川氏をあえて国税庁のトップにする必要はなかったと思う。ここも安倍政権が国民の方を向いていない象徴例で、支持率低下の原因になっていると思う。

首相夫人は「公人」、きちんとルール化を!

他方で、昭恵夫人の名誉校長就任については、安倍さんは反省の意をきっちりと示した。であれば昭恵さんの名誉職就任やその他の活動についてのルール、そして政府職員の随行・サポートのルールなどを厳格・明確に定めて事後挽回としての態度を示すべきだ。

首相夫人が完全なる私人であれば政府のサポートは基本的には受けられない。しかし首相夫人に公的な役割が一定あるとするなら政府のサポートも一定必要だろう。政府のサポートを付けるのであれば都合よく「私人だから」という逃げを許さない、公的な存在としてのルールが必要になる。

アメリカ大統領夫人はファーストレディーとして制度化され、政府のサポートを堂々と受ける代わりに一定のルールに服する。フランスにおいて、マクロン大統領が妻をファーストレディーとして位置付ける制度を作ろうとしたら、国民から批判の声が上がった。ファーストレディーのために予算を拡大するのはおかしいという理由で。これも国によって異なるだろうが、いずれにせよ無条件で何のルールもなく政府のサポートを受けることはおかしいことだ。

昭恵さんは政府職員のサポートを受けて日本各地や海外にも行っていた。自民党議員の選挙応援にも行っていたとのこと。そして何かあれば政府幹部に直接連絡もとっていた。ところが肝心のところでは私人という立場を強調して、政府職員とのやり取りやその他の記録については公文書性を否定し、公開を拒否した。これはご都合主義のほか何ものでもない。

昭恵さんがここまでの存在であれば、公的な存在としてきっちりとルール化すべきだ。今、昭恵さんは私人として自由な立場でありながら政府のサポートを受けているという一番楽な立場になっている。ここを徹底して見直すことが事後挽回策のポイントの一つだが、安倍政権の動きは鈍い。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.68(8月15日配信)からの引用・再編集版です。もっと読みたい方は、メールマガジンで!! 今号は《[決定版!実践危機管理]安倍政権支持率危機!なぜ謝罪・反省だけでは逆効果なのか?》特集です。

(撮影=市来朋久)
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