蟹瀬誠一

1950年、東京都生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米「TIME」誌特派員を経て独立。TBS「報道特集」キャスターとして日本のテレビ報道界に転身する。テレビ朝日「ザ・ニュースキャスター」「スーパーJチャンネル」などでもメーンキャスターを担当。現在は、明治大学国際日本学部長として教鞭を執るかたわら、テレビや雑誌など各種メディアで活躍。『4つの資産』『すべての情報は1冊の手帳にまとめなさい』『「1日15分」が一生を変える!』など著書多数。


 

食事に時間をかけていられない──。ジャーナリストという仕事についた宿命だと思っていました。実際、アメリカの通信社にいた頃の昼食時間は3分。しかし、フランスの通信社に移ると、意外にもみな1時間以上かけてランチを楽しむ。さらに、米「TIME」誌東京特派員時代になると、大臣などの要人にアポを取って会食することが多くなり、食事にゆっくりと時間をかけるようになっていきました。気がつけば、毎日のようにコースでフレンチを食べていました。

しかし、そんな食生活をがらりと変える「事件」が起きました。40歳になる頃です。テレビ番組で若年性アルツハイマーの取材中に自分の脳も調べてもらったところ、小さな白点がいくつも。症状が出ていない脳血栓でした。医者に脅されて、食生活を和食中心に切り替えました。

もともと寿司が好物だったので、「寿司健康法」と称し、毎日寿司屋の暖簾を潜ったこともありました。魚には体にいい脂が多く含まれていてカロリーも低いので、効果は絶大。でも出費が嵩み、妻からレッドカードを出されてしまいました(笑)。

私は「10年ごとに人生の軸足を変える」ことを提唱しています。年代によって必要とされる姿勢が違うからです。20代は「美しく」生きる。30代は「強く」、40代は「賢く」、50代は「豊かに」、そして私がそろそろさしかかる60代は「健康に」です。すべて健康のため、と徹底する考えではなく、健康を維持するためにある程度のお金と意識を使いましょう、ということです。

私の場合、運動は大好きなゴルフ、毎朝の腹筋や腕立て伏せ、なるべく階段を使う、という程度ですが、食事はやはり和食がメーンですね。

紹介する2店は、和食の素晴らしさを堪能できる名店です。

実は世界の料理人は行き詰まりつつあり、彼らが最後に辿り着くのは和食なのだといわれています。素材の組み合わせ、味付けの感性の細やかさ、見た目の優雅さなど。おいしくて飽きがこないのは間違いない。

つい最近も時間がなくて店で弁当を買ったら398円。ずいぶん安いのに案外うまかった。この値段で焼き魚に煮物やお浸しがつくバランスのよさは世界中で和食だけでしょう。

アンチエイジングのコツを聞かれることがあります。私の答えは「1日を大切にすごす」。40代の頃、取材でモスクワの銃撃戦に出くわし、頭上を弾丸が飛び交う体験をしました。お陰で「明日死ぬかもしれないのだから、今日を大切に生きよう」と思うようになったのです。ただし、なるべく楽観的に。楽しくなければ生きている甲斐がありません。そんな気持ちでいると、運動にも食事にも自然と意識が向き、ずっと健康でいられるのではないでしょうか。