ある日、転職斡旋会社からC社と同じ業界の中小企業社長と面接がセットされました。2代目社長は30代前半で落合より20歳以上も年下です。転職斡旋会社からは「小さい会社だが成長中で将来性がある」と紹介されました。「成長中の会社ならば給与がいい仕事があるかもしれない」と、彼は淡い期待を持ち面接にのぞみました。

「言われたことならできる」という人はいらない

社長「はじめまして。ご足労いただきありがとうございます。お時間もないのでさっそく面接に入らせてください。落合さんはC社さんにおられたんですよね。当社ではどんなことができると考えていますか?」
本人「言われたことは何でもできます。仕事ですから」
社長「……落合さん、言われたとおりにやるだけなら、うちに仕事はありません。単純な仕事ならばITやAIを使えばスピードも人間よりも速く、正確で、しかも低コストです。コンビニでも無人レジが登場している時代ですよ」
本人「……そうですね……」
社長「当社はまだまだ零細企業ですが、これからは世界で戦えるように大きくしていきたいと考えています。そのためにITやAIなどの先端技術をフル活用していきます。私たちが欲しい人材は、ITやAIで代替できない、AIを仕事の武器として活用できる人材です。『言われたことならできる』という人を抱える余裕は当社にはありません。ご理解ください。お互いにこのまま話を続けても時間のムダだと思います」

最近、落合と話をする機会がありました。面接でのやり取りで若社長が言った言葉に思い悩んでいるようでした。彼は私にこうぶちまけました。「そもそも仕事は言われたことをやってお金をもらうものじゃないのか!? なんでこうなるんだ……」。

「会社に人生を預けている」という自覚がない

これは実際にいる知人をモデルにして一人の話にまとめたものですが、あなたの周りにもきっと同じように「言われた通りにしか仕事をしない人」がいると思います。

彼の何が問題だったのでしょうか? 結論を言えば、自らの成長を怠り、自分の人生をすべて会社に預けてきたからです。そしてさらに問題なのは、彼自身が「自分は会社に人生を預けている」という自覚がまったくない点にあります。5年後や10年後に会社が残っている保証はどこにもありません。

「仕事ではお金をもらえばいい」と考え、自発的に動くことなく、言われたことしかせずに成長を怠っていたら、いざ会社が危なくなったときに受け入れてくれる会社を見つけることができません。実力のないビジネスパーソンには再就職が難しい時代になりました。自分の人生をまるごと会社に預けていては危ないのです。