家族も医療スタッフも癒やされる

病院の天井に投影された星空。

この活動を始めて気づいたのは、「病院がプラネタリウム」というプロジェクトは、患者さんのためだけではなかったということです。介護をするご家族や医師や看護師さん、介護士さんらも一緒にドームに入ってもらうのですが、皆さんも患者さんと同じように「おー」とか「わぁ」などの声を一様にあげます。医療スタッフや介護する側も大きな視点を得ることで、癒やしを得てくれています。ドームの中ではその人の「素」が出てきて、特別な空間になるのでしょう。

病院以外にも、ホスピスやターミナルケアの場に呼ばれることもあります。長期入院をしている子供さんのいる家庭では、親御さんだけでなく、きょうだいたちもつらい思いをしています。家族で一緒に同じ星空を見て、思い出を作ってもらえているのであれば、とてもうれしいです。

2013年にこのプロジェクト立ち上げて以来、趣旨に賛同して助成金を出してくれる企業や賛同者が増えています。2014年は15回、2015年は25回、2016年度は39回と、全国で34カ所の施設を訪れることができました。一度の訪問で複数回投影するので、投影の合計回数は195回に上ります。この数は、年を追うごとに増えています。今では全国40カ所の病院を訪れていて、自ら費用を出して呼んでくださる施設も増えています。

私のような「宙先案内人」の仲間を増やして、もっと全国で必要とされている人たちのために数多く公演したいと思っています。

高橋真理子(たかはし・まりこ)
宙先案内人、星空工房アルリシャ代表
1970年、埼玉県生まれ。山梨県在住。北海道大学理学部などや大学大学院でオーロラ研究を行う。97年から山梨県立科学館天文担当としてプラネタリウムの番組制作や企画を行った。2013年独立、星空工房アルリシャを立ち上げ、「病院がプラネタリウム」プロジェクトを開始する。他にも宇宙と音楽を融合させた公演も行っている。著書に『人はなぜ星を見上げるのか』(新日本出版社)がある。
病院がプラネタリウム http://hospla.net/
(取材・構成=田中響子 ジャーナリスト)
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