医療機関に入院せず自宅で療養する在宅患者が増える傾向にある現在の日本。在宅で医療従事者による手厚い看護は心強いものです。中ルミさんは、患者さんの体だけでなく心も癒やしたいという思いで訪問看護ステーションを立ち上げました。海外では当たり前になっているホリスティック医療(統合医療)を用いて、患者さんに寄り添い、心身のサポートをしています。

海外ではホリスティックケアは当たり前

もともと、放射線医学総合研究所でがん患者さんを担当する看護師をしていました。

中ルミ・NPO法人国際ヒーリング看護協会理事長

がん告知をされた患者さんとどう向き合えばよいかで悩んでいたとき、研修で訪れたカナダの医療機関で、西洋医療以外のさまざまなセラピーが取り入れられていたり、牧師さんがスピリチュアルなお話をしに病棟を回って患者さんに声かたりするということを知りました。初めて見る海外の医療現場にはとても驚きました。

カナダは現代医療と代替補完医療とを混合して行う「ホリスティック医療」が進んでいて、その病院でも、音楽療法士や芸術療法士らが専門家として医療チームの一員として組み込まれていました。セラピーも複数あり、患者さんはそれぞれ自分に合ったセラピーを治療の中に組み込んでいました。日本だと入院患者さんはパジャマを着て、まさに“病人”という感じですが、カナダでは女性は化粧をしたりして着飾って、まったく病人らしくありません。患者さんたちは自分の病気のことをよく勉強していて、死生観もしっかりしていました。

その理由は、彼らにはセラピーやケアといったフォローアップがあったからだとわかりました。セラピーでは、人は肉体と心と魂の三位一体で存在し、誰しも自分の存在価値や魂の役割があると教えられます。これが腑に落ちると、患者さんは自分の人生を生きるようになり、その後の生き方ががらりと変わっていきます。

当時、職場で告知後の患者さんに、どんな声をかけたらいいのか、何をしてあげられるのか、何年間も自問自答していました。その結果、その人のことを思えば思うほど、逆に足が遠のいてしまっていたこともありました。でも、セラピーを取り入れたら、患者さんに寄り添える、そう考え、海外での看護現場での取り組みを学び、日本でも実践していきたいと考えるようになりました。

たとえば、イギリスでは皇室が率先してアロマセラピーやリフレクソロジー、ホメオパシーなどの代替補完療法を取り入れていますし、アメリカも統合医療を取り入れている医療機関が多くあります。中には、保険で前世療法を5回まで受けることのできる機関もあります。オーストラリアでは、大学に「ヒーリング学科」があるそうです。

このように海外でヒーリングが発展している背景には、それぞれの国の医療制度の充実度合いが関係しているようです。

日本では国民皆保険がしっかりしていて、保険で受けられる医療のレベルが高いことが利点です。一方、海外では、国民皆保険がなかったり、あっても受けられる医療に限度があったりします。そのため、おのずと自分の体は自分で守るという意識になり、ヒーリングや自然療法、代替補完療法が発達してきたのです。