日本の医療費問題が大きくなる中、これからの日本は、在宅医療への重点がますます置かれていきます。20年前から、最後まで患者さんに寄り添える医療を行いたいと、在宅医療も行う船戸クリニックの船戸崇史先生に、「自宅で看取る」ことの大切さについて聞きました。
「生き様は死に様である」
開業医になって25年、これまで800人以上の人を看取ってきましたが、在宅医療をしてきて、気づいたことがいくつかあります。
それは、「病気にも意味がある」ということ、「誰にでも人生最後の言葉がある」こと、「生き様は死に様である」ということです。
病気になったことで初めて気づくこともあるし、病気が生き方に影響を与えることもあります。それは家族や周りの人も同様です。そもそも多くの病気は、自分の生活習慣や考え方の癖などが原因で発生しています。そこに気づくと、その後の体調や環境が大きく変わってくるのです。
患者さんの中には、がんになって自分のそれまでの生き方を顧みた結果、優しくなれたり、家族に「ありがとう」と言えるようになり、それ以降、状態が良くなったり、人が変わったようになる人がいます。自分は何のために生きるのか、なぜ死ぬのか、という哲学には、人の生き方や視点を変える何かがあるのでしょう。そうやって患者さん1人ひとりが“生ききる”ことをサポートすることも、我々医者の役目だと思っています。
最期を迎える人が家にいる場合、どのような対応をとればよいのか家族は戸惑うものです。
患者さんも、いくら死を覚悟しているとしても、やはり死は怖いものです。パニックになったり、予期せぬ行動をとることもあります。そうした行動を踏まえて、在宅看護をする場合、ご家族に注意してほしいことがいくつかあります。