危険視されながらも需要に大きな貢献をする原発。現状、人々の感情や政治勢力は「ゼロか100か」と極端な見解を示す場合が多いが、「原発のリスクを認めつつ利用し、一方でどうやって電力需要を抑えるかといった大人の議論を始めなければならない」と橘川氏は指摘する。

その後、3月18日、原子力安全・保安院はINESの評価を「レベル5」に引き上げた。今後、大人の議論の必要性がますます高まるだろう。

また今回、福島第一原発は津波の被害を受けて危機に陥ったが、同じく東北地方の太平洋沿岸に位置する東北電力の女川原発は、大きな事故を起こしていない。これは大きな注目点だ。

「女川町自体は壊滅的な被害を受けているが原発は無事。それどころか原発が避難場所になっている。偶然助かったのか、津波対策が功を奏した結果なのか。今後の検証が待たれるところです」(橘川氏)

現在、日本の電源は火力が約60%、原子力が約30%。政府の2010年エネルギー基本計画は30年までに原子力や太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー由来の電源、「ゼロエミッション電源」を70%にまで拡大させることを目標としている。

「目標の70%のうち約50%が原子力で、約20%が太陽光や風力などの原子力以外の電源。政府はCO2削減のためこの目標を立てているが、国内で原発抜きにゼロエミッション電源の依存度を高めるのは無理なやり方」と橘川氏は話す。