心理的幸福度で測る仕事の価値

GNHでは、必須4事項と主要9指標、72の測定基準を使って幸福指数を測定している。たとえば、主要9指標にはこんな言葉が並ぶ。

▼国民総幸福量の主要9指標

(1)心理的な幸福度合い(2)健康(3)時間の使い方(4)教育(5)文化の多様性と復元力(6)統治(7)コミュニティのバイタリティ(8)生態系の多様性と回復力(9)生活水準

主要指標の一つには、「1日の時間の使い方について 国民はどう感じているか」が挙げられているなど、国内総生産の計算には含まれない、現代人が抱える問題を含んでいるのが特徴といえるだろう。

ビジネスにおいても、自分のチーム、会社、あるいは自分自身にとって価値を生み出しているものを導きだすために、ブータンのGNHやスティグリッツの指標を応用してみるのもおもしろそうだ。こうした人間の感情や欲求を理解して働きやすい環境を作り、モチベーションを上げることが、結果として仕事での利益につながるものだからだ。

またたとえば人生においては、健康、時間の使い方、コミュニティのバイタリティ、生活水準などを指標として仕事の価値を測ってみるのもいい。

では、私たちの仕事の価値を導き出すために、ブータンのGNHやスティグリッツの指標を応用してみたい。こうした指標は主観によるため、非科学的だとする意見もある。だが、自分や周りのことなら、上記のような働きやすさや健康面などの主観に加え、給料や労働時間などの客観的な数値も両方をそろえやすいだろう。

例えば、スティグリッツやマズローになぞらえて項目を挙げ、ブータンのように正負の感情から1~10段階の分けて点数化してみる。すると、自分自身がどれくらい仕事に時間を割くべきかという価値の指標にもなるし、チームメンバーや社員の欲求を具体的に汲むこともできそうだ。

・生理的欲求(衣食住が足りるか、など)
・安全の欲求(経済の安定、健康状態の維持、時間の管理など)
・社会的所属と愛の欲求(仕事の割り振りなど)
・承認の欲求(立場や階級など)
・自己実現の欲求(自分の能力と可能性を発揮、具現化など)

各項目に、自分の現状に即した内容を書き込んで、1~10で点数化するとより分かりやすい。これで客観的に自分の状況を把握したり、以前の会社や部署との比較、他のメンバーの価値観を知る……などさまざまな方法に役立てることができるだろう。

こうした人間の感情や欲求を理解して働きやすい環境を作ると、モチベーションが高まるものだ。人生においては、健康、時間の使い方、コミュニティのバイタリティ、生活水準などを指標として、その中での仕事の価値を計ってみることもできるだろう。

こうしたことを複合すると、一番大切なのは「心理的な幸福度合い」という結果になるかもしれない。個人の感覚によるところが大きな側面ではある。だが、たとえば少しくらいの給料の違いなら、人とのつながり、自分が望む結果や満足度の高さを重視したほうが、“自己実現度”の指標での評価は高くなるだろう。こうして自分にとっての仕事の価値を知り、自分なりにその評価を高く保つ工夫ができれば、結果として仕事のパフォーマンスにもつながりそうだ。

[注釈・参考資料]
YOMIURI ONLINE , ナポレオン3世超え最年少大統領…親EU維持, 2017年5月8日
日経新聞, 仏大統領選、マクロン氏圧勝「フランスの価値守る」 2017年5月8日
ニッセイ基礎研究所、幸福度指標開発に向けた期待
Newsweek日本版, サルコジが推す「豊かさ」新指標
みずほ総合研究所、エコノミストEyes, 幸福度指標で経済成長の「質」を測る環境省、平成23年度 環境経済の政策研究 持続可能な発展のための新しい社会経済システムの検討と、それを示す指標群の開発に関する研究 最終研究報告書
Chip Conley, Measuring what makes life worthwhile, Ted 2010ddd

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