O&Oが日本で立ち上がったことを誇りに思う
こうした社員の思いを受け社長会を代表して、エグゼクティブスポンサーとして支援をしているのが、日本のJ&Jグループでコンタクトレンズ製品を手がけるビジョンケア カンパニーの代表取締役プレジデントのデイビッド・R・スミス氏である。スミス氏は、活動に多大な期待を寄せる。
「私は『O&O』が日本で立ち上がったことを誇りに感じています。LGBTの当事者をサポートする活動ですが、それだけにとどまらず、社員全員がインクルーシブな環境で働いていると感じられるような、素晴らしいロールモデルにもなっていると思います」
海外60カ国に275以上のグループ企業を有し、「世界最大のトータルヘルスカンパニー」として成長するJ&J。アメリカ、カナダと北米に次いで、日本で「O&O」がスタートしたことは、スミス氏にとっても驚きだったという。
J&Jでは「我が信条(Our Credo)」という企業理念のもと、顧客、社員、地域社会、株主に対して責任を果たすことを実践している。そのために「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進することの意義をこう語る。
「社員一人一人が個人として尊重され、自分らしく働けると感じられることはとても重要です。そして多様性のあるチームというのは革新的でより良いアイデアを出すことができ、顧客や株主への責任を果たすこともできます。さらに『O&O』が立ち上がったことの成果は何かというと、やはりマネジメント層に対してもっと多様な人材を採用することの価値を知らしめたこと。女性だけに限らず、バックグラウンドやライフスタイルの違いも含めて多様な人材を採用することで、わが社がより競争力をもち、さまざまな変化にすばやく対応できる革新的な企業になれる、ということを理解させたことが最大の功績だと思っています」
社内ではLGBTを支援する人を「スーパーアライ」と呼ぶ。その一人、スパイン事業部・営業戦略企画のシニアマネジャーの山田育代さんは「WLI」の活動で田口さんと出会った。
彼から「実は……」と明かされたときも、仕事ぶりや性格をわかっていたのでとまどいはなかった。「O&O」のイベントにも気負いなく参加したが、そこで愕然とする。LGBTとひと言でいっても、実は多種多様なセクシュアリティーを持つ人がいることを知り、思いがけない気づきもあった。
「男性の気持ちが初めてわかりました。私もLGBTの当事者に会ったとき、何と声をかけていいかわからなかった。そこで“これか!”と気づいたのです、男性のとまどいはと。男性も彼らなりに、女性はこう思っているのではないかと考えて言葉を発していたんですね。けれど『そこまで無理して働かなくてもいいんじゃない』とケアしたつもりでも、反発を招くことがある。女性も働き方や価値観は多様だから、関わり方でとまどう気持ちがわかるなと。私自身も“男女”に固執していて、ダイバーシティというものをあまり理解していなかったことに気づいたのです」