ジョンソン・エンド・ジョンソンではLGBTの活躍を支える取り組みが動きだしている。先進企業が目指している「ダイバーシティ」とは?

コアになる個性を隠すのは大変なストレス

ダイバーシティとは「多様性」を意味し、組織においては性別や年齢、国籍など多様な人材を活用するマネジメントが求められている。多くの企業では職場における女性の活躍推進を主眼としてきたが、近年注目されるのが「LGBT」への取り組みだ。

LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害を含む、心と体の性が一致しない人)の頭文字をとり、セクシュアルマイノリティー(性的少数者)の総称の一つとされる。

2015年、電通ダイバーシティ・ラボが全国6万9989人を対象に行った調査では、LGBT層に該当する人は日本の人口の7.6%。20人の職場に1人は存在するという試算も提起された。だが、日本の企業では対応が立ち遅れているのが現状だ。その先駆けとして、日本のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)グループでスタートしたのが「Open&Out(O&O)」だ。

ダイバーシティ推進を担う3人。彼らの後ろには、経営の指針となる「我が信条」が光る。

社員による自主的な取り組みで、LGBTに関する啓発活動を行っている。発起人となった人事部の田口周平さんも当事者として尽力してきた。なぜ、自ら進んで立ち上げようと思ったのか。

「そもそも、この会社を選んだのは、ダイバーシティにおけるリーディングカンパニーとして魅かれたからです。中途採用でいくつか面接を受けたけれど、他の会社は似通った担当者なのに、J&Jだけはまるで違うタイプの方が入れ代わり立ち代わり出てきた(笑)。何でこんなに異質な人材で成り立っているのだろうと気になったんです」

サービス業から外資のゲーム会社、精密機器メーカーを経て、ニューヨークへ留学。インターナショナルスクールで国際関係学を学び、市役所で人事のインターンを経験など、まさに多種多様な人々と関わる中で、人事部のディレクターの言葉が心に残る。「人事とは一緒に働いている人をハッピーにする仕事だよ」と。帰国後11年にJ&Jへ入社し、人事部で障害者採用の仕事に携った。

その頃、上司が参加する「WLI(Women's Leadership Initiative)」のグループに誘われた。職場における女性の活躍を推進する活動を手伝うなかで、アメリカから来日したチーフ・ダイバーシティ・オフィサーと話す機会があり、北米ではLGBTに関わるグループがあることを初めて知った。

「僕自身もゲイなので、現地の活動を知るほどに興味が湧きました。J&Jで働いていることを周りの仲間に話すと、LGBTのネットワークの中に同僚もいるとわかった。一緒に会って話すと、社内で心ないことを言われて傷ついたというケースもあったと聞きました。僕は人事部の中でオープンにできたけれど、やはり自分のコアになる個性を隠し続けることは大変なストレスなんです」