O&Oを受け入れられるカルチャーができていた

ではLGBTの当事者を部下にもつ上司はどのように受けとめているのか。人事部ディレクターの大島恵美さんは、中途入社で配属された田口さんに出会った頃、こんな印象を抱いていた。

人事部 ディレクター 大島恵美さん

「非常に打ち解けやすく親しみやすい感じ。ただ繊細なところがあって、仕事は細やかにこなせても、人に強く言われるとシュンとなってしまうようなもろさが、心配でもありましたね」

大島さんは「WLI」の設立メンバーの一人で、職場における社員の意識を変えるためにさまざまなイベントを企画してきた。ダイバーシティに興味を持つ田口さんにも声をかけ、細やかに気づく働きぶりに助けられてきたという。やがて彼自身も自分がゲイであることを職場でオープンに話すようになったが、ことさら意識することはなかった。LGBTのグループを立ち上げたいと相談されたときも「ぜひ、やったらいい」と応援したという大島さんは、

「約5年間、上司として見ているけれど、すごく成長したなと思う。『O&O』を立ち上げたことで自信がつき、仕事に対する意欲も変わったのでは」と、田口さんの変化に目をみはる。

十数年前、「WLI」設立に関わった当時はまだ“ダイバーシティって何?”と社内の認識も低かった。立ち上げの苦労を知るだけに、よりマイノリティーなLGBTへの理解を得るには早すぎるのでは、と危惧もしたという。

「でも、今は『O&O』を受け入れられるカルチャーができていると実感しています。こうした活動が立ち上がることで、本当に多様な人材を受け入れる体制があると社員も感じられる。LGBTの当事者だけでなく、どんなマイノリティーの人でも働きやすい会社なのだと思えることが大切ですから」

Open&OutとWLIの合同カンファレンスにて。

実際に「O&O」に参加したメンバーにアンケートを取ったところ、以下のような回答があった。

〈性的マイノリティーに対する偏見がまだまだ多いと感じ、差別のない職場環境に整備したいと思った〉
〈親戚や職場から「結婚しないのか?」と問われると、自分自身が悪のような感覚に陥る場面が多くある。メディアで女装パフォーマーの方々の露出が増え、すべてのLGBTの人がそのようだと誤解されることが多い〉

一方、少しずつ社内の人にカミングアウトできるようになった、仕事に対する意識が変わったという人もいる。

〈会社として受け入れてくれる人たちがいると感じられたので心強かった〉
〈上司に自分自身のことを知ってもらい、理解を得ることで、安心感と働きやすさを感じている。今回の取り組みが始まったことで、新しいつながり(仲間)ができたことも良かった……〉