落語「長屋の花見」のポイントは、いくつかある。まずは、物質的に恵まれてなくても、工夫することの大切さ。花見のポイントは文字通り花を見ることであり、お茶やたくわんだけでも、楽しいことには変わりがない。
次に、仲間がいることの大切さ。長屋の住人や大家さんは、わいわいがやがや、いろいろと雑談をして、それが実は楽しい。逆に、本物のお酒やかまぼこ、卵焼きがあっても、一人で花見をしていてはそんなに楽しくない。
何よりも「長屋の花見」の登場人物たちは、楽観的である。人生を前向きに楽しむことを知っている。だからこそ、その様子がいきいきと聴く者に伝わってくるのである。
「長屋の花見」に限らず、落語は、人の欠点にやさしい。主要な登場人物の一人、「与太郎」はダメ人間だが、周囲の人間が親切に接する。
決して、能力や経済効率だけで人間を判断しない。落語のそんな知恵は、これからの私たちが1番大切にすべきことの1つなのではないか。
(岡村隆広=撮影 AFLO=写真)