アメリカは父性文化、日本は母性文化
アメリカファーストを掲げて就任した米国のトランプ大統領。就任以来、TPP離脱やメキシコ国境への壁の設置、中東・アフリカ数カ国の国民の一時入国禁止措置など強硬な施策を打ち出してきました。こうした彼の流儀は、典型的なトップダウン型といえます。そして、その背景にあるのは欧米等を中心とした父性文化にほかなりません。
父性文化の特徴は、目標に対しては直進的、他人との関係においては自己中心で弱者切り捨て、目的達成手段は実力行使かつ指揮統制を重視します。そして、保守主義であり、場合によっては独裁に走りかねません。マネジメントにおいては、経営者は自分にとって扱いやすい平均化された人物(社員)を好み、逆に有能であっても自分と合わない人物は排除する傾向が強いといえます。
そうしたなか、日本型経営は反対に、母性文化を拠り所とした「和の経営のシステム」で一貫してやってきました。これは、トップダウンに対してミドル・アップダウン型です。目標には進化と循環で臨み、他者とは調和、協調、対等、寛容、対話とボトムアップで目標達成をめざします。全体としては革新主義であり、民主主義ということになります。つまり、父性文化と母性文化はこれほど違うということです。
これらを経営の現場に即して、もう少し掘り下げてみましょう。まず、父性文化を背景としたトップダウン型の経営は強欲であり、利益の配分もトップが独り占めに近いわけです。しかし、日本は母性文化に立脚した和の文化であり、それを生かした年功序列、終身雇用、全社一丸のいわゆる「三種の神器」で成功してきました。
ところが戦後、欧米、とりわけアメリカから父性の文化が入ってきました。経営面においては、デミング賞などに象徴される品質管理、コンサルティングファームのマネジメント手法が脚光を浴びました。日本人はそれらを絶妙のバランス感覚で取り入れ、望ましい度合いにしたわけです。それでもやはり、比率でいうと母性のほうが強いでしょう。私のイメージでは、日本は母性対父性の割合が8対2ぐらいです。アメリカはその逆で2対8ぐらいになるでしょう。