音楽プレーヤーの奇妙な体験とは
約10年前の本になるが、アメリカのITジャーナリストであるスティーブン・レヴィは、『iPodは何を変えたのか?』(ソフトバンク クリエイティブ)のなかで、自身の奇妙なiPod体験について報告している。
彼が「自分の音楽コレクションをシャッフルして再生していると、異様な頻度でスティーリー・ダンの曲が顔を出す」というのだ。レヴィのiTunesライブラリには3000曲ぐらいが入っているが、スティーリー・ダンの曲はそのうちのおよそ50曲にすぎない。率にして、わずか2%以下だ。にもかかわらず、彼のiPodは「スティーリー・ダンにぞっこんだった」。
iPodのシャッフル機能は、本当にランダムに再生しているのか。ひょっとしたら、プログラムになんらかの細工が施されているのではないか。
<私がニューズウィーク誌にスティーリー・ダン問題の記事を書いたところ、私のメールボックスは、賛同者からの電子メールで埋め尽くされた。イエス! イエス! イエス!>
その反応を、いくつか列挙しておこう。
「(前略)私が何か歌やバンドを思い浮かべると、あらびっくり、iPodは次にその曲を再生するんだよ」
「iPodには気分の変化があるらしい。日曜日と月曜日の夜はブルース。平日の夜はロック。月曜日と水曜日の朝はフォーク、木曜日の朝と土曜日の午後にはブルーグラスがよくかかる」
「何が癪に障るって、夏しかクリスマスソングをかけないことだよ」
他にも、ガールフレンドを車に乗せると、2回に1回のペースでボブ・ディランを再生するなんて投稿もあった。このように、多くの人が、iPodのシャッフル機能には、何か不思議な仕掛けがあるのではないかと訝しんでいたのだ。