ところで、健康で働けるのが、今は一番嬉しいという宮澤氏は、「会社のない日は健康のために8キロ、1時間40分くらいはウオーキングしています」と話す。
東京ガスで宮澤氏の先輩にあたり、現在は東京ガス関連の会社で派遣で働く毛塚茂氏(73歳・写真左)もこう語る。
「いつまで働くかは決めていませんが、私の周りで70歳過ぎて働いている人は珍しいかもしれません。体のために深酒はしなくなったが、仕事をした後のお酒は、やっぱりうまい。健康だから働けるんです」
結婚記念日前後には必ず夫婦で旅行に出かけ、年に2回は2人で旅をするという宮澤氏は、「自分が仕事で一度行った場所でも、苦労かけた妻が望めば何度でも足を運ぶ」と苦笑しながら話す。
毛塚氏も「夫婦で毎月、旅行に行ってます。女房の足の調子が悪いので車になりますが、今年の4月は妙高高原に行きましたし、最近では伊豆や恐山にでかけました」と妻への気遣いを見せる。妻を思いやりながら2人で旅するのは、定年後を楽しく送る企業戦士の術ともいえるだろう。
宮澤氏は第二の職場からもらう月平均8万円の給料の中から妻に1万円を渡し、残りは自分で自由に使える小遣いになる。
「小遣いの一番の支出は孫5人への誕生日や節句、お年玉などの出費です。それが渡せなければお爺ちゃんの迫力がなくなって、単なる白髪の年寄りになってしまいますからね」
外国では喜んで定年を迎えて仕事を辞めていく場合が多いが、今の日本では心待ちとはほど遠く、定年後の収入のことを考えて悲しげに定年を待っている人がかなりいる。その中で、明るい笑顔の宮澤氏は絵に描いたハッピーリタイアメントといえるだろう。
※すべて雑誌掲載当時
(田辺慎司=撮影 藤川 太=モデル家計簿作成・解説)